七面鳥 (モネ)

クロード・モネ『七面鳥』：印象派巨匠の装飾画とパトロンとの関係

1877年、クロード・モネによって制作された油彩画『七面鳥』（仏: Les Dindons）は、現在、パリのオルセー美術館に収蔵されている印象派の傑作です。この絵画は、モネのキャリアにおいて重要な転換期を示すだけでなく、当時の美術界のパトロンシップや、モネ自身の芸術的発展を理解する上で貴重な作品となっています。

モネは1874年の第1回印象派展に出展した『印象・日の出』などで知られるようになりますが、それ以前はサロンでの落選を繰り返すなど、成功した画家とはいえませんでした。そんなモネに転機をもたらしたのが、パリの百貨店経営者エルネスト・オシュデとの出会いです。

オシュデはモネのパトロンとなり、1870年から所有するモンジュロンの別荘、ロッテンブール館の居間を飾るため、モネに高さ175cmほどの4点の大作の制作を依頼しました。そのうちの1点こそが、『七面鳥』です。

この絵画は、ロッテンブール館の広大な庭で自由に動き回る七面鳥を描き込んでいます。背景には、館の建物が描かれ、全体として、ロッテンブール館の豊かな自然環境と、そこに暮らす人々の生活の一端を切り取ったような、装飾的で華やかな雰囲気を醸し出しています。七面鳥は、単なるモチーフというだけでなく、ロッテンブール館の穏やかな日常を象徴する存在として描かれていると言えるでしょう。

しかし、オシュデの経営する百貨店は1877年に経営難に陥り倒産。結果、オシュデのコレクションは1878年に競売にかけられました。この競売によって、モネの作品群も分散することになります。『七面鳥』はその後、紆余曲折を経て1947年にルーブル美術館に寄贈され、1986年からオルセー美術館で一般公開されるようになりました。

『七面鳥』は、単なる動物画ではなく、モネが装飾的な大作に取り組んだ貴重な経験を示す作品です。この経験は、1890年代以降にモネが精力的に制作した『睡蓮』シリーズへと繋がる重要なステップとなりました。『睡蓮』シリーズは、モネの晩年の代表作として知られており、その壮大で繊細な表現は、この『七面鳥』で培われた装飾的な構図力と色彩感覚の賜物と言えるでしょう。

『七面鳥』は、モネの芸術的進化、パトロンとの関係、そして19世紀フランス美術界の状況を理解するための重要な手がかりとなる作品です。絵画からは、単なる風景描写を超えた、モネの鋭い観察眼と、自然と人間との調和を描写しようとする彼の深い感性が感じられます。オルセー美術館で、この傑作を鑑賞し、モネの芸術世界を堪能してみてはいかがでしょうか。

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