万景峰号

万景峰号について

万景峰号（マンギョンボンごう）は、1971年に北朝鮮で就役した貨客船です。船名の由来は、平壌近郊にある名勝地・万景峰から来ており、北朝鮮の海運大学が所有しています。特に、北朝鮮を支援する在日韓国・朝鮮人の資金によって建造された興味深い歴史を持ちます。

歴史と運航の変遷

万景峰号はもともと、在日本朝鮮人総連合会（朝鮮総連）の資金で建設され、1984年まで主に在日朝鮮人の帰還事業に利用されていました。その後、貨物船としての役割に転換し、老朽化の問題を抱えつつも、観光客誘致のための航路を開設しようとしていました。2017年5月には、ロシアのウラジオストクと北朝鮮の羅先経済特区を結ぶ定期航路が開設され、万景峰号がその運航に選ばれました。最初の便は、羅津港から出発し、ウラジオストク港に到着しましたが、乗客は北朝鮮人ではなく主に中国人でした。

この航路は、初めて外国人を対象としたもので、観光客が乗船するはずでしたが、実際には取材クルーのほか、日本人とロシア人が乗っていました。2017年10月からは不定期運航に移行し、コメや小麦を運ぶ貨物船として機能するようになりました。しかし、2018年2月にはロシア当局から入港を拒否され、食料や燃料が不足し、遭難信号を発信せざるを得なくなりました。国連の制裁に引っかかる恐れもあり、その後北朝鮮へ引き返しました。

万景峰92の存在

万景峰号には同名の「万景峰92」という姉妹船があります。これは、金日成主席の80歳の誕生日を祝うために1992年に建造され、北朝鮮に寄贈されました。万景峰92は清津市で進水し、多数のキャビンやレストランを備えています。ただし、2017年5月以降に運航で使用されているのは万景峰号の方であり、万景峰92とは異なる船体です。

航路の多様性

万景峰92は、1992年から新潟と元山との間で不定期航路を運営していました。この航路では、在日本朝鮮人の祖国訪問や物資の輸送が行われており、神戸港からの便もありました。しかし2006年以降には、北朝鮮によるミサイル発射などの影響で日本入港が禁止され、結果的に万景峰92号も入港できなくなりました。

さらに、万景峰92は2011年からは羅津から金剛山への観光船としても運航され、外国人を対象にした航路を提供しました。しかし、国際的な緊張のため、万景峰号の運営は依然として多くの制約に直面しています。

環境問題

万景峰号の運航に関する問題の一つとして、船底塗料の使用があります。万景峰号はトリブチルスズを含む塗料を使用しており、これが環境へ与える影響が懸念されています。国際海事機関による規制が施行される中、万景峰号の入港は環境問題としても取り上げられています。このように、万景峰号は歴史的背景や国際的なルールに対する影響を含む、さまざまな問題を内包している船舶です。

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