三ツ沢貝塚

三ツ沢貝塚：縄文時代の記憶を刻む丘

横浜市神奈川区に位置する三ツ沢貝塚は、縄文時代中期から後期にかけての貴重な遺跡です。沢渡、三ツ沢東町、三ツ沢南町にまたがるこの貝塚は、かつて人々が生活を営んでいた場所であり、当時の文化や自然環境を今に伝える重要な手がかりとなります。横浜市登録地域文化財（地域史跡）にも登録されています。

発見と初期の調査

三ツ沢貝塚が最初に発見されたのは1905年（明治38年）のこと。イギリス人医師であり、考古学者でもあったニール・ゴードン・マンローによってその存在が明らかにされました。マンローは翌年にかけて八木奘三郎らと共に発掘調査を行い、大量の貝層、縄文土器、石器、人骨、そして竪穴建物などの遺構を発見しました。

貝層の特徴

貝塚の貝層は、現在の県立横浜翠嵐高等学校の東側、台地の斜面を中心に点在しています。その厚さは30～40センチメートル、厚い場所では約1メートルにも達します。貝層に含まれるのは、ハマグリ、カガミガイ、シオフキ、アカニシといった、海に生息する貝類です。これらの貝殻が堆積した様子から、三ツ沢貝塚がいわゆる「純鹹（じゅんかん）貝塚」であることがわかります。

出土する土器

出土する土器は、縄文時代後期の堀之内2式土器や加曽利B式土器が中心ですが、中期にあたる勝坂式土器、阿玉台式土器、加曾利E式土器なども含まれています。これらの遺物は、当時の文化交流や生活様式を知る上で貴重な資料です。出土した遺物は、マンローによって東京帝室博物館（現・東京国立博物館）に寄贈された他、一部はマンローの故郷であるスコットランドの国立博物館にも送られ、保管されています。

近年

2013年（平成25年）には、横浜市歴史博物館が企画展「N.G.マンローと日本考古学-横浜を掘った英国人学者」を開催し、スコットランドに送られた遺物も含めた調査が行われました。この企画展を通じて、三ツ沢貝塚の規模と価値が再評価されました。

現在の状況

かつて畑地や山林だった三ツ沢貝塚のある台地は、現在では宅地化が進み、多くの住宅やマンションが立ち並んでいます。しかし、貝塚の埋蔵文化財包蔵地範囲は横浜市の文化財地図や行政地図情報システムによって周知されており、開発の際には発掘調査が実施されています。1988年（昭和63年）には横浜市登録地域文化財（史跡）に登録され、県立横浜翠嵐高等学校東側の道路沿いや滝ノ川緑道入り口に解説板が設置されています。

三ツ沢貝塚は、縄文時代の人々の暮らしを垣間見ることができる貴重な場所です。都市開発が進む現代においても、その歴史的価値は失われることなく、大切に保存され、未来へと語り継がれていくことでしょう。

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