三卿

三卿の歴史と役割

三卿（さんぎょう）は江戸時代において、次期皇位継承者、すなわち儲君（ちょくん）や東宮に近接して仕え、その教育や生活を支える公卿のことを指します。特に、霊元天皇の時代に始まった儲君の制度に深く関わり、皇族の成長を見守る重要な役割を果たしました。

三卿の誕生と設立

天和2年（1682年）、霊元天皇は小倉事件を契機に五宮を儲君として擁立しました。この際、立太子の儀式が中世以来途絶えていたのにも関わらず復活を遂げ、五宮が正式に東宮となったのです。当時、霊元天皇は五宮を支えるため、公卿の中から特に選ばれた三名の者にその役割を託けました。正親町公通、梅園季保、河鰭実陳の三名は、天皇の指示のもとで儲君を支え、教育に携わり、さらには儲君の御所における人事を監督する役割を担いました。

これにより、儲君の御所における外戚の影響が次第に薄まり、新しい形で公卿の指導力が発揮されることになります。外戚による支援が減少するにつれて、武家から選ばれた「肝煎」と呼ばれる担当者が代わりにその役割を果たすようになり、次々と新しい三名の公卿が任命されました。

三卿の役割と影響

三卿の公卿の任命は、後の皇位継承においても重要な意味を持ちました。以後、儲君は主に皇女または摂家の子供として扱われ、実際に儲君を育てた外戚の地位は失われました。そのため、儲君の御所における責任者としての位置は、ますます三卿に集約されていくこととなったのです。このように三卿は、単なる教育の枠を超え、儲君の政治的なバックグラウンドにも関与する立場となりました。

初期には「三卿」や「三人衆」として呼ばれていた彼らですが、宝暦年間には「三卿」として統一された呼称が広まり、公式な場でも使用されるようになったことから、その重要性が伺えます。

公卿の権威と昇進

三卿に任命された公卿は、多くが皇族に近い羽林家やその他名家出身者であり、将来的には次代の天皇の側近として重要な役割を担うことが期待されました。実際、これまでの三卿の多くは、在任中または新天皇即位と共に議奏や院伝奏、さらには武家伝奏といった要職に任じられ、出世の道が開かれていました。

しかし、すべてが順調に昇進するわけではありませんでした。仁孝天皇の儲君となった熙宮の例では、三卿であった野宮定祥が即位後に期待した地位を得られず、憤慨したということがあります。この出来事は、当時の中級公家社会において三卿の地位が昇進のための登竜門として広く認識されていたことの証拠として取り上げることができます。

歴史的に見ても、三卿の制度は江戸時代の朝廷改革や権力の再編成の一環として重要な役割を果たしました。三卿たちの存在は、儲君の成長を支え、次代天皇の側近として日本の歴史において重要な影響を与えたのです。

結論

三卿の制度は、ただの教育機関ではなく、複雑な政治的背景を持つものでした。江戸時代における三卿の存在は、皇位継承の流れや朝廷制度そのものに大きな影響を及ぼすものであり、その役割は今なお歴史的な考察の対象となっています。

もう一度検索