摂家

摂家（せっけ）

摂家は、鎌倉時代中期に藤原氏の嫡流として成立した近衛家、一条家、九条家、鷹司家、二条家の5つの家系を指し、公家の中で最も高い位に位置しています。彼らは大納言、右大臣、左大臣を経て摂政や関白、さらには太政大臣に昇進できる資格を有していました。また、摂家は「摂関家」「五摂家」とも呼ばれています。

摂関家の成立

平安時代前期に、藤原北家の良房が清和天皇の外祖父として初めて摂政に任じられました。その後、養子の藤原基経が関白として4代にわたり権力を持ち続けた結果、藤原北家は他の氏族から一線を画す存在となりました。基経の子孫が摂政の地位を争うようになり、彼らの中でも九条流が主導権を握ることになります。

この時期、藤原道長は朝廷政治を支配し、3代の天皇に対し自身の娘を嫁がせることで、摂関政治の最盛期を迎えました。その権勢は荘園の増大にもつながり、道長の子孫は「御堂流」として知られます。しかし、後に御堂流の権力に陰りが見え、頼通と天皇の関係が険悪になる中で、摂関家の立場は厳しくなります。

摂関政治の変遷

院政の進展により、摂関権を持つ者が変動する傾向が強まりました。藤原忠通の時代には、外戚関係に依存しない新たな摂関家の成立が確認され、天皇との関係が重要視されることとなります。治天の君の権力が強まる中、摂関家は当初の権限を失い、内紛や権力闘争が絶えませんでした。

五摂家の形成

建長4年（1252年）に鷹司兼平が摂政に任じられ、摂関家は近衛家、一条家、九条家、二条家、鷹司家の五家体制へと移行します。各家系はそれぞれの影響力を持ち、特に近衛家は他の公家に比べて権勢を保ち続けましたが、時には緊張関係も見られました。

戦国時代と武家関白の時代

戦国時代に入ると、幕府から朝廷への支援が減少し、摂家の状況は厳しくなりました。特に鷹司家や二条家は困窮し、経済的支援を求める必要性が増しました。近年の研究では摂家が朝廷の運営から距離を取り、地方武家との連携を深めたことが指摘されています。

天正13年（1585年）、豊臣秀吉が関白に就任し、以降摂家は武家の関白と位置づけられることとなります。この時期、俊を身につけた豊臣家が力を持つ一方で、摂家の権威は弱まっていきました。秀吉の死後、関白職は再び摂家に戻ったが、その影響力は次第に減少していきます。

江戸時代の摂家

江戸時代には、摂家が朝廷の取締役としての地位を持ちつつ、経済的には困窮する時期もありました。しかし、近衛家だけは酒造業の繁栄により良好な財政状況を保っており、この家は特に強力な存在となりました。

明治維新後、摂関職は廃止され、摂家は「旧摂家」と呼ばれるようになりましたが、彼らは依然として公爵としての地位を持ち、貴族院での活動を続けました。

摂家の儀式と社会的地位

摂家は天皇に関わる儀式の作法を代々伝えていました。特に即位灌頂などの重要な儀式は、二条家が伝え続けていました。これにより、摂家は「天下の御師範」を名乗り、他の家系との優位を保ち続ける役割を果たしました。

摂家の地位は高く維持されており、自家に相続人がない場合には、他の摂家や皇族出身者からの養子を迎えることが求められました。このような厳格な相続制度が、摂家の貴種性を支えてきたのです。

摂家の歴史は1300年以上にわたって続き、その中で日本の政治や文化に対して重要な影響を与え続けました。その権限の変遷や経済的背景、社会的地位は、日本の歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。

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