三字経

三字経は、中国の伝統的な初学者向けの学習書であり、百家姓、千字文と並び称される存在です。この書の特徴は、3文字で1句を構成し、偶数句末で韻を踏んでいる点にあります。平易な文章で、学習の重要性、儒教の基本的な徳目、経典の概要、一般常識、そして中国の歴史などが盛り込まれています。その内容の幅広さと暗記しやすい形式から、古くから多くの人々に親しまれてきました。

成立と内容

三字経の作者は南宋時代の王応麟であると伝えられていますが、確たる証拠があるわけではありません。テキストには様々なバージョンが存在し、一般的に、時代が新しいものほど字数が多くなっています。特に歴史に関する記述は、時代が新しくなるにつれて新しい歴史が追記されていくため、字数が増加する傾向にあります。例えば、章炳麟が1928年に著した『増訂三字経』では、民国までの歴史が追加されています。

現存するテキストの中で最も短いものは1068字で、異なり字数は512字です。テキストはおおよそ4句がひとまとまりとなっており、2句目と4句目の最後の字が韻を踏むように構成されています。しかし、例外的に「一而十、十而百。百而千、千而万」のように全く韻を踏んでいない箇所も存在します。また、「席・執」「筆・易」「国・出」「七・籍」などの押韻は、入声の衰退を反映していると考えられます。さらに、「人・星」「曽・倫」「鼎・晋」「敏・警」「行・民」などの押韻からは、作者の音韻体系において/-in/と/-iŋ/が合流していたことが推測されます。

学習書としての特徴

三字経はその暗記しやすい構成から、啓蒙書として広く用いられました。そのため、三字経の形式を模倣した多くの啓蒙書が作られました。日本においても、幕末には「我日本、一称和」で始まる『本朝三字経』という書物が作られています。

三字経は、単なる暗記教材としてだけでなく、中国の文化や歴史を学ぶ上でも重要な役割を果たしてきました。その平易な文章と韻を踏んだ形式は、読者を飽きさせず、学習への興味を喚起します。現代においても、中国文化を学ぶ上で、三字経は貴重な資料として活用されています。

脚注

三字経は、中国の伝統的な教育において重要な役割を果たした書物です。
様々なバージョンが存在し、時代とともに内容が変化してきたことが特徴です。
暗記しやすい形式は、学習効果を高める上で大きな役割を果たしました。

外部リンク

三字経 （大修館漢字文化資料館）

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