三尾城 (近江国)

三尾城について

三尾城（みおのき）は、古代日本の近江国に存在したとされる城です。正確な所在地は不明で、現在の滋賀県高島市付近にあったと推定されています。『日本書紀』に記述が見られるのみで、その詳細については多くの謎に包まれています。

歴史

三尾城の名前が歴史に登場するのは、『日本書紀』の天武天皇元年（672年）7月の条です。この時、天智天皇の死後、大海人皇子（後の天武天皇）と大友皇子の間で起こった壬申の乱において、大海人皇子側の軍勢が近江に進攻する際に、湖北方面軍が北陸路を制圧した後、7月22日に三尾城を攻略したと記されています。この記録以外には、三尾城に関する記述は確認されていません。

考証

「三尾」という地名は、古くから存在しており、『和名類聚抄』にも近江国高島郡に「三尾郷」として記録されています。現在の滋賀県高島市安曇川町三尾里がその遺称地と考えられています。この地は、天智天皇や大友皇子が都を置いた大津宮の北方に位置することから、三尾城は大津宮の北側を守るための防御施設として築かれたという説が有力です。築城時期は明確ではありませんが、白村江の戦い（663年）の敗北後、西日本各地に築かれた古代山城と同様の背景を持つと考えられています。

三尾城の具体的な場所は特定されていませんが、有力な説として白鬚神社（高島市鵜川）北側の長法寺山が挙げられます。この場所は、長法寺跡や中世の山城跡も重なっているため、確実な遺構は発見されていません。しかし、1982年の調査で山中に7キロメートル以上にも及ぶ石塁が確認されており、これが古代山城の遺構である可能性が指摘されています。この石塁は、江戸時代の動物よけであるシシ垣であるという伝承もありますが、その規模や水門のような構造から、古代山城の遺構である可能性が高いと考えられています。

また、三尾の地は、継体天皇の出自に関わる古代豪族の三尾氏が勢力を持っていた場所です。三尾氏は朝鮮文化の影響を強く受けていたとされ、三尾城の築城に三尾氏が関わったという説や、壬申の乱の際に三尾城を守っていた武将が三尾氏だったという説もあります。一方で、『日本書紀』には、壬申の乱の際に近江京から倭京に至る道々に監視所が置かれたという記述があることから、三尾城は城郭ではなく、そのような監視所の役割を果たしていたという説も存在します。

三尾城に関する研究は進められていますが、その全貌はまだ明らかになっていません。今後の調査によって、新たな事実が明らかになることが期待されます。

参考文献

『壬申の乱における三尾城の所在をめぐって (PDF)』財団法人滋賀県文化財保護協会〈滋賀文化財だよりNo.64〉, 1982年。
「三尾城」『滋賀県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系25〉, 1991年。

関連項目

* 古代山城

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