三島通良

三島通良：日本の学校衛生の礎を築いた先駆者

三島通良（みしま みちよし、1866年7月17日 - 1925年3月9日）は、明治から大正時代にかけて活躍した日本の衛生学者、医師です。彼は、日本の学校衛生の草分け的存在として知られ、その功績から「日本の学校衛生の生みの親」とも呼ばれています。

生い立ちと教育

1866年、武蔵国入間郡霞関村笠幡（現在の埼玉県川越市笠幡）に生まれた三島は、父・通郷の影響を受け、向学心に燃えていました。父は私塾を開き、後に官吏となった人物で、その影響下で三島は東京大学医学部へと進学します。しかし、在学中に父を亡くし経済的に困窮したため、語学教師や翻訳などのアルバイトで学費を工面する苦学生でした。この間、育児書「ははのつとめ」を執筆し、広く読まれました。

学校衛生への貢献

大学卒業後、大学院で小児科学を専攻した三島は、学校衛生を研究課題とします。当時の日本の学校環境は劣悪で、非衛生的であり、教育衛生の概念もほとんど知られていませんでした。そこで文部省は、欧米の学校衛生をそのまま導入するのではなく、日本独自の学校衛生を確立するため、三島に全国の学校調査を委嘱しました。

1891年から全国の学校を調査した三島は、校舎の構造、採光、換気、飲料水、便所、机や椅子の寸法、教科書の活字の大きさなど、多岐にわたる項目を精力的に調査しました。その結果、学校の立地条件や校舎の構造が不適切であること、机や椅子が生徒の体に合っていないこと、教員の衛生知識が不足していることなど、学校環境の多くの問題点を明らかにしました。彼は、これらの問題を改善するために、具体的な対策を提案しました。

三島の調査結果は「学校衛生学」としてまとめられ、1893年に発表されました。この中で、彼は学校環境の劣悪さを厳しく指摘し、「学校は病態奇形製造所」とまで断じました。また、政府が馬や蚕の調査には熱心であるのに、子供の健康には無関心であると批判しました。

学校衛生制度の確立

三島の提言は、学校衛生制度の確立に大きな影響を与えました。彼は学校衛生顧問会議の主事として、学校清潔方法、学生生徒身体検査規程、公立学校医設置に関する規定、学校伝染病予防及び消毒方法、未成年者喫煙禁止法などの制度を整備しました。これらの制度は、現代の日本の学校保健の基礎となっています。

また、三島は児童の体格に合わせた机や椅子の標準案や、児童の服装の改良図案を提案しました。さらに、学校医の設置を提唱し、学校における衛生管理の重要性を訴えました。

教育学者との論争

学校衛生の観点から子供の健康を重視する三島と、教育学者の間には、学校体育をめぐって論争が生じました。教育学者たちは、日清戦争後の尚武的な気運から、小学校の体育に撃剣と柔術を導入することを主張しましたが、三島はこれに反対し、「撃剣は小学児童の体育に全く益がない」と断じました。この論争は、学校衛生と教育のあり方を問い直すきっかけとなりました。

その他の活動と晩年

三島は、東京高師教授や文部省学校衛生課長を務め、学校衛生の普及に尽力しました。また、小児の発育に関する研究も行い、その成果は「日本健体小児ノ発育論」としてまとめられ、医学博士の学位を取得しました。晩年は脳神経衰弱症を患い、医院を廃業しましたが、研究活動を続けました。

人物像

三島は、文学的な趣味を持ち、詩、文、書、謡曲を嗜んだ一方で、全国各地を巡回する中で旅行を楽しむ一面もありました。また、喫煙者でもあったようです。幸徳秋水が発行していた平民新聞に、下田歌子に恋文を出したという記事が掲載されています。

業績

三島通良の主な業績は以下の通りです。

学校衛生の制度化
学校環境の改善
児童の体格に合わせた机や椅子の標準化
育児書の執筆
* 小児の発育に関する研究

結論

三島通良は、日本の学校衛生の発展に大きな貢献をした偉人です。彼の残した業績は、現代の学校保健にも受け継がれており、子供たちの健康を守る上で重要な役割を果たしています。彼の功績は、日本の教育史に深く刻まれています。

もう一度検索