三嶋唯義

三嶋 唯義

三嶋 唯義（みしま ただよし）は、1932年5月24日に生を受け、1997年1月12日に生涯を閉じた日本の哲学者です。

鳥取県倉吉市に生まれた三嶋は、京都大学大学院文学研究科に進み、博士課程を単位取得退学しました。研究者としての道を歩み始め、1965年には京都産業大学の助教授に就任します。その後、1970年には同大学の教授となり、教育者としても多くの学生を指導しました。専門分野はフランス哲学であり、長年にわたりこの分野の研究に尽力しました。

三嶋唯義の思想の中心には「人格主義」がありました。人間の尊厳や個人の内面に重きを置くこの思想を深く探求し、複数の著作を通じてその考えを発表しています。また、学問そのもののあり方についても考察を深め、『学問論』といった著作で自身の見解を展開しました。

さらに、児童心理学の大家であるジャン・ピアジェの思想にも関心を寄せ、『ピアジェ 晩年の思想』を著すなど、その業績の紹介にも貢献しました。デカルトをはじめとするフランスの哲学者たちの合理主義（ラショナリスム）についても論考を発表しています。

精力的な執筆活動に加え、フランス哲学書の翻訳も数多く手掛けました。エチエンヌ・ジルソン、ブリース・パラン、ガブリエル・マルセル、ポール・リクールといった重要な思想家たちの著作を日本に紹介し、国内の哲学研究に貢献しました。ピアジェやジェローム・ブルーナーといった発達心理学分野の翻訳・編訳にも携わっています。

主な著作には、人格主義に関する研究をまとめた初期の『人格主義の思想』や、晩年の『人格主義の原理』、そして『新・学問のすすめ』などがあります。

著書一覧

『人格主義の思想』紀伊国屋新書 1969年
『学問論』法律文化社 1980年
『ピアジェ 晩年の思想』行路社 1981年
『ラショナリスムの学問理念 デカルト論攷』行路社 1984年
『人格主義』文化書房博文社 1990年
『新・学問のすすめ 人間に生れて、人間として、人間らしく生きるために』八千代出版 1991年
『人格主義の原理』行路社 1996年
『ことばと人間』行路社 1997年

翻訳一覧

エチエンヌ・ジルソン『神と哲学』ヴェリタス書院 1966年、行路社（改訂版）1975年
ブリース・パラン『ことばの思想史』大修館書店 1972年
『創造的知能の開発 ピアジェ・インヘルダー訪日講演集』滝沢武久共訳 誠文堂新光社 1972年
エチエンヌ・ジルソン『理性の思想史－哲学的経験の一体性』行路社 1975年、新版1985年
A.D.セルティランジュ『アンリ・ベルグソンとともに 持続論・科学論・宗教論』行路社 1976年
『ピアジェとブルーナー 発達と学習の心理学』編訳 誠文堂新光社 1976年
G.H.ボードリイ『信仰と科学 テイヤール・ド・シャルダン』後藤平共訳 創造社 1978年
ガブリエル・マルセル/ポール・リクール『《対話》マルセルとリクール』行路社 1979年

1997年1月12日、三嶋唯義は呼吸不全により惜しまれつつ逝去しました。哲学者として、そして教育者として、彼は人格主義の研究、学問論の展開、そしてフランス哲学の紹介を通じて、日本の思想界に確かな足跡を残しました。

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