三村昌泰

三村昌泰（みむら まさやす）は、1941年10月11日に生まれ、2021年4月8日に逝去した日本の数学者です。特に現象数理学という分野において、国内外で多大な貢献を成し遂げた第一人者として知られています。

香川県高松市出身の三村氏は、1965年に京都大学工学部数理工学科を卒業後、同大学大学院に進み、1967年に修士課程を修了しました。その後も研究を続け、1973年には京都大学より工学博士号を取得しています。博士号取得後は、教育者・研究者としての道を歩み始め、甲南大学で助教授、後に教授を務めました。1980年には広島大学理学部の教授に就任し、日本の数理科学研究の拠点の一つで教鞭をとることとなります。

キャリアを通じて、三村氏は複数の名門大学を歴任しました。1993年からは東京大学大学院数理科学研究科の教授として、日本の数理科学研究の中心地で活躍。その後、再び広島大学理学部・大学院の教授に戻り、1999年までは東京大学も併任しました。2004年からは明治大学理工学部教授として迎えられ、同大学に設置された先端数理科学インスティテュート（MIMS）の所長として、学際的な数理科学研究の推進と新たな研究領域の開拓に尽力しました。また、2011年には明治大学大学院先端数理科学研究科の教授および研究科長を務めるなど、教育システムの構築にも深く関わっています。

三村氏の活動は国内にとどまらず、国際的にも高く評価されていました。1990年には京都で開催された国際数学者会議（ICM）において、応用数学部門で招待講演を行うという栄誉を得ています。これは、その研究成果が世界の数学界で認められていたことの証です。さらに、フランスの科学高等研究院（IHES）やポアンカレ研究所といった世界的な研究機関で客員研究員を務め、社会科学高等研究院（EHESS）では客員教授として招聘されるなど、海外の研究者との交流も積極的に行いました。2008年には中華民国数学會より外国人貢献賞を受賞しており、その国際的な影響力の大きさが示されています。

三村氏の研究は、自然界に現れる様々なパターン（例えば生物の模様や生態系の構造）や、非線形現象のダイナミクス（時間的な変化）を数理的なモデルを用いて解析することに主眼が置かれていました。特に、数理生物学の分野における貢献は顕著であり、反応拡散系などの数理モデルを用いた研究は、生命現象の理解に新たな視点をもたらしました。

その研究成果や教育活動は、多くの著書にまとめられています。『現象数理学入門』、『マレー数理生物学入門』といった入門書から、『パターン形成とダイナミクス』、『生物にみられるパターンとその起源』など専門的なシリーズまで、多数の単著、共著、編著を世に出しており、これらの著作は現象数理学を学ぶ上で重要な文献となっています。

長年にわたる学術および教育への貢献に対して、三村氏には多くの栄典が贈られています。広島大学および明治大学からは名誉教授の称号が授与されました。2021年4月8日に79歳で逝去された後、その功績が特に認められ、没日付で従四位に叙され、瑞宝中綬章が追贈されています。

三村昌泰氏は、現象数理学という分野を日本に確立し、その発展を牽引したリーダーであり、多くの優れた研究者を育成した教育者でもありました。その学術的な遺産は、今後も現象数理学の研究者たちに受け継がれていくことでしょう。

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