三桓氏

春秋時代の覇者、魯国を揺るがした三桓氏

春秋時代、魯国において大きな影響力を持ったのが三桓氏です。三桓氏とは、魯の第15代君主、桓公の子孫である孟孫氏、叔孫氏、季孫氏の3つの氏族を指します。彼らは魯国の公族でありながら、代々魯国の政治の実権を掌握し、その歴史は魯国の興亡と深く関わっています。

三桓氏の台頭と権力掌握

桓公の子である慶父、叔牙、季友の3兄弟は、後に荘公の重臣となりました。その後、それぞれの氏族が独立し、孟孫氏、叔孫氏、季孫氏として勢力を拡大していきます。特に季孫氏は、他の二氏を凌駕するほどの権力を持ちました。この三氏による政治的支配は、魯国の政治構造に大きな影響を与え、王室の権威を弱める結果となりました。

権力闘争と魯国の動乱

三桓氏による支配は、常に権力闘争と内紛を伴っていました。昭公は紀元前517年、季孫意如を攻めましたが、かえって三桓氏の軍事力に屈し、国外に追放されるという事態に陥りました。さらに、定公の治世下では、季孫氏の家臣である陽虎が反乱を起こしますが、失敗に終わり国外へ追放されました。これらの出来事は、三桓氏の強大な軍事力と、魯国における彼らの揺るぎない地位を示しています。

紀元前498年には、季孫氏の宰であった子路が三桓氏の居城を破壊しようと試みましたが、成功しませんでした。その後、哀公は三桓氏を排除しようとしましたが、これも失敗に終わり、逆に魯から追放され、越で亡くなりました。この哀公の失敗は、三桓氏の権力の絶大さを改めて示すものとなりました。

三桓氏の系図と主要人物

三桓氏の系図を辿ると、それぞれの氏族に多くの著名な人物が登場します。季孫氏からは、映画『孔子』にも登場する季孫意如をはじめ、数々の有力者が輩出しました。同様に、叔孫氏、孟孫氏からも、魯国の政治に深く関わった多くの重要な人物が出ています。これらの個々の活躍が、三桓氏全体の勢力維持に貢献しました。

季孫氏: 季友（成季）、季孫行父（季文子）、季孫宿（季武子）、季孫紇（季悼子）、季孫意如（季平子）、季孫斯（季桓子）、季孫肥（季康子）、季孫佗（季宣子）、季孫莒（季懿子）、季孫彊（季昭子）

叔孫氏: 叔牙（僖叔）、公孫茲（叔孫戴伯）、叔孫得臣（叔孫荘叔）、叔孫僑如（叔孫宣伯）、叔孫豹（叔孫穆子）、叔孫婼（叔孫昭子）、叔孫不敢（叔孫成子）、叔孫州仇（叔孫武叔）、叔孫舒（叔孫文子）

孟孫氏: 慶父（共仲）、公孫敖（孟穆伯）、仲孫穀（孟文伯）、仲孫難（孟恵叔）、仲孫蔑（孟献子）、仲孫速（孟荘子）、仲孫羯（孟孝伯）、仲孫玃（孟僖子）、仲孫何忌（孟懿子）、仲孫彘（孟武伯）、仲孫捷（孟敬子）

衰退と魯国の運命

三桓氏は悼公を擁立しましたが、この時点では魯公の権力は既に非常に弱体化していました。三桓氏の支配は、魯国の政治的安定を損ない、内紛や弱体化を招いたと言えるでしょう。彼らは魯国の政治の中枢を握りましたが、その支配は常に不安定であり、権力闘争は絶えませんでした。結果として、魯国は周辺諸国に比べて弱体化し、春秋時代から戦国時代へと続く激動の時代を生き抜く上で、大きな困難に直面することとなりました。三桓氏の存在は、魯国の歴史における重要な転換点であり、その興亡を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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