三森泰明

三森 泰明

日本の男子バレーボール界において、歴史に名を刻んだ人物の一人に三森 泰明（みつもり やすあき）氏がいます。1946年11月23日に東京都で生を受け、2019年5月19日に72年の生涯を閉じました。三森氏は、選手として最高峰の舞台で活躍し、また、バレーボールの技術そのものにも深い影響を与えた可能性のある存在として、その功績が語り継がれています。

三森氏のバレーボール選手としての基盤は、日本鋼管（NKK）バレーボール部、通称「NKKナイツ」で培われました。NKKナイツは、当時の日本の実業団バレーボールリーグにおける強豪チームであり、国内外のトップ選手が集う場所でした。三森氏はNKKナイツの一員として、厳しい練習と実戦を積み重ね、その技術を磨きました。この時代、日本の男子バレーボールは、長身の外国人選手に対して、巧みな技術と組織的な連携、そして何よりも粘り強い守備で対抗しようとしていました。三森氏もまた、こうした日本バレーボールのスタイルの中で、自身の役割を確立していきました。彼のプレーは、チームの守備の要として、相手の強力なスパイクやフェイントからボールを拾い上げ、攻撃へと繋ぐ重要な役割を担っていたと考えられます。

三森氏のキャリアにおける最大のハイライトの一つは、1968年にメキシコシティで開催された第19回夏季オリンピック競技大会です。この大会にバレーボール男子日本代表チームの一員として参加した三森氏は、歴史的な銀メダル獲得に大きく貢献しました。当時のオリンピックにおける男子バレーボールは、ソビエト連邦やチェコスロバキアといった東欧の国々が圧倒的な強さを見せており、日本がその牙城を崩すことは容易ではありませんでした。しかし、松平康隆監督率いる日本代表チームは、「回転レシーブ」に代表される独自の守備戦術と、クイック攻撃などの攻撃パターンを駆使し、世界の強豪を次々と破っていきました。三森氏もまた、チームの卓越した守備陣の一角として、その粘り強いレシーブで相手の攻撃を防ぎ、日本の速攻を可能にする質の高いトスを供給するなど、銀メダル獲得という快挙に不可欠な存在でした。このメダルは、日本男子バレーボール史上初のオリンピックメダルであり、多くの国民に感動と勇気を与え、その後のバレーボール人気の高まりに貢献しました。

さらに、三森泰明氏の名前には、バレーボールにおける画期的な守備技術、「フライングレシーブ」の考案者であるという説が付随しています。フライングレシーブは、選手が低い体勢から前方に大きく飛び込み、腕や腹部を地面に滑らせながらボールをレシーブする技術です。この技術の登場により、これまでは諦めざるを得なかったような、ネットから遠く離れた場所や極めて低い位置へのボールに対しても対応できるようになり、レシーブの守備範囲が格段に広がりました。まさに「コートに落ちたボールは負け」という守備哲学を体現する技術であり、現代バレーボールにおいても、あらゆる状況でボールを拾い上げるための必須技術となっています。三森氏がこのフライングレシーブを最初に考案、実践、あるいは普及させた人物であるという説は、彼の守備技術への深い洞察と、既成概念にとらわれない発想力があったことを示唆しています。この説の確固たる証拠は少ないものの、彼の選手としての卓越したレシーブ能力や、当時の日本のバレーボール界が常に新しい技術を模索していた背景を考えると、彼がこの技術開発に関わっていた可能性は十分に考えられます。

三森泰明氏が日本のバレーボール史に残した足跡は、1968年メキシコシティオリンピックでの銀メダル獲得という輝かしい実績に加え、フライングレシーブという革新的な技術にまつわる考案者説という形で記憶されています。彼が選手として果たした役割、そしてもし仮に技術開発にも寄与していたのだとすれば、その影響は計り知れません。日本バレーボールが世界レベルで戦うための礎を築いた世代の一人として、三森氏の功績は今後も日本のバレーボールの歴史の中で重要な位置を占め続けるでしょう。

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