三橋一也

三橋一也（みつはし かずや）は、大正14年（1925年）に現在の群馬県高崎市で生まれ、平成22年（2010年）7月にその生涯を閉じた日本の著名な造園家です。公共の場の緑化や都市空間の整備に多大な貢献をしました。

彼の造園家としての道のりは、千葉大学園芸学部の前身である千葉農業専門学校での学びから始まりました。在学中から実践的な活動に関わり、卒業前の1949年には青山霊園の設計業務に携わった経験を持ちます。卒業後、東京都の職員としてキャリアを積むことになります。

東京都においては、特に重要な時期の都市整備に関与しました。昭和37年（1962年）には、東京オリンピック開催に向けた施設建設を担うオリンピック施設建設事務所の造園課長に就任。この立場で、東京オリンピックの主要会場の一つとなった駒沢オリンピック公園の整備計画や建設を主導的に進めました。この公園は、単なる競技施設としてだけでなく、広大な緑地空間を持つ市民憩いの場としても設計され、その後の都市公園のあり方にも影響を与えました。

その後も東京都の公園緑地行政の要職を歴任し、昭和46年（1971年）には北部公園緑地事務所長を務め、さらに西部公園緑地事務所長としても手腕を発揮しました。これらの経験を通じて、東京都内の様々な公園や緑地の整備、管理運営に深く関わりました。

三橋氏の業績は高く評価されており、数々の賞を受賞しています。特に、駒沢オリンピック公園の計画に関する功績は顕著で、昭和38年度（1963年度）には、堀内亨一氏、川本昭雄氏、加藤隆氏らとの共同研究「駒沢オリンピック公園の計画意図と事後評価」により、第3回日本都市計画学会石川賞（計画設計部門）を受賞しました。これは、大規模な都市公園の計画から評価まで一貫して取り組んだ先駆的な業績として評価されたものです。また、1988年には造園分野での永年の貢献が認められ、第10回日本公園緑地協会北村賞を受賞しています。

教育分野との関わりも持ち続け、母校である千葉大学の同窓会である戸定会においては相談役を務めるなど、後進の育成や大学への貢献にも尽力しました。

私生活においては、歴史学者の三橋正氏は次男にあたります。

造園技術の普及・啓発にも熱心で、多くの著書や共著編を出版しました。これらの書籍は、専門家向けのものから一般家庭での園芸や庭づくりに関するものまで多岐にわたり、日本の造園文化の発展に寄与しました。主な著作は以下の通りです。

『生活を明るくする家庭園芸』 家の光協会, 1961年
『趣味の庭づくり全科』 家の光協会, 1979年
『駒沢オリンピック公園』 郷学舎 東京公園文庫(10), 1981年
『庭のデザインブック』 石川岩雄共著. 大泉書店, 1960年
『小さな庭づくり 手軽に花を楽しむ』 編. サンケイ新聞社出版局, 1970年
『庭づくり全科』 石川岩雄 共著. 家の光協会, 1970年
『小庭園のつくり方 庭づくりプラン50例』 中島宏共著. 鶴書房, 1977年
『造園植物と施設の管理 造園技術必携 4』 中島宏共著. 鹿島出版会, 1979年
『やさしい庭作り 実例と相談』（カラー園芸入門） 中島宏共著. 主婦の友社, 1979年
『造園植栽の設計と施工』 造園技術必携 2, 相川貞晴共著. 鹿島出版会, 1981年
『落葉樹の整枝と剪定プロのコツ』 室星健磨・市川建夫共著. 永岡書店, 1985年
『小庭づくり カラー実例集』 高橋亮共著. 家の光協会, 1993年
『庭園施工管理・庭園用語』 (庭園施工自習講座) 中島宏と共著. 加島書店, 1996年
『落葉樹の整枝と剪定プロのコツ/これならズバリ急所がわかる!』 共著. 永岡書店, 1997年
* 『常緑樹の整枝と剪定プロのコツ/これならわかる切ってよい枝・悪い枝』 共著. 永岡書店, 1998年

参考文献としては、堀江典子氏による「三橋一也による駒沢オリンピック園の計画意図と事後評価(1978)」や、雑誌「都市計画」100号記念特集号などにその功績や関連情報が見られます。三橋一也氏は、日本の近代的な都市空間における造園のあり方を形作った重要な人物の一人と言えるでしょう。

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