三池丸級貨客船

三池丸級貨客船の概要

三池丸級貨客船は、日本郵船が所有していた特別設計の貨客船のクラスである。1940年代初頭に建造が計画され、三菱長崎造船所で4隻の建設が予定されていたが、1隻が途中で中止となり、最終的に1941年から1943年にかけて3隻が完成した。残念ながら、竣工時期が太平洋戦争の開戦に重なり、商業航海は行われず、すべてが徴傭船として運用された。このクラスの船舶は、建造計画通り竣工したのは1隻に留まり、残りの2隻は大幅に設計が簡素化されてしまった。結果的に、これらの船は太平洋戦争中にすべて喪失し、戦後には残存船が存在しなくなった。

建造背景

日本政府は1937年に「優秀船舶建造助成施設」を設け、当時の日本郵船が新たな優秀貨客船の建造を進めることが決定された。具体的には、欧州やシアトル、南米、豪州航路向けに新造船を建造するという方針が示された。この取り組みの中には、7隻で総トン数9万4500トンの新しい優秀船を建造する計画が含まれており、特にシアトル航路向けには新田丸級貨客船が予定されていた。

ただし、この計画に際し、既存の船舶の更新や振替も提案されており、当時のシアトル航路や南米、西豪州航路の運航船は老朽化が進んでいた。具体的には、シアトル航路に就航していた「氷川丸」などは比較的新しい船だったが、豪州航路の船舶は1900年代初頭のものが多く、南米西岸航路の船も同様に能力が衰えていたため、早急に改善が求められていた。

最終的に、三池丸級貨客船は、シアトル航路用の「三池丸」と「三島丸」、豪州航路用の「安芸丸」と「阿波丸」の4隻が計画され、各船は8,000万円から840万円程度の建造コストが見積もられた。このうち、日本政府からの助成金も活用され、船舶の建造が進められた。

特徴

三池丸級貨客船は、シアトル航路向けの「三池丸」と「三島丸」と、豪州航路向けの「安芸丸」と「阿波丸」では、外観や内部設計に大きな違いが見られた。「三池丸」と「三島丸」には一等船室が存在しない一方、「安芸丸」と「阿波丸」には一等船室が設けられていた。これは、豪州航路が主要な観光地への設路であったことから、乗客の快適さを重視した結果である。「三池丸」は設計通りに完成したが、「三島丸」と「安芸丸」「阿波丸」は、戦争による資材不足の影響で設計変更が強いられ、上層甲板の削減や載貨重量の増加が見られた。

就役とその後

三池丸級貨客船は当初、シアトル、西南米、西豪州の各航路に就航する予定であった。しかし、開戦の影響で期待されていた航海は実現せず、各船は運命を翻弄されることになる。まず「三池丸」は1941年秋に竣工したものの、シアトル航路はすでに休航していたため、商業運航はなく、日本陸軍に徴用されることとなった。

その後の届け出では「三島丸」は予定変更で豪州航路向けとなり、「安芸丸」は建艦が中断となり解体処分となった。最終的に、三池丸と安芸丸は1944年に戦没し、阿波丸については後に緑十字船として運用されたが、1945年に発生した「阿波丸事件」で沈没した。

このように、三池丸級貨客船は時代背景の厳しさの中で設計されたものであり、計画どおりに進まない運営と運命に翻弄されながらも、日本の海運史に名を残す存在となったと言える。

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