三河吉野朝

三河吉野朝の概要

三河吉野朝（みかわよしのちょう）は、南北朝時代における重要な王朝の一つであり、南朝第96代の後醍醐天皇から後村上天皇、長慶天皇、後亀山天皇に至る57年間にわたって存在したものとされています。この王朝は、従来の大和吉野朝と並んで、愛知県の三河地方にも同時期に王朝が存在したという説を基にしています。

新都の建設と改元

三河吉野朝の成立に際し、後醍醐天皇崩御後の延元4年（1339年）8月16日に、義良親王が大和吉野朝で即位を果たしました。南朝の宮廷は、新たな国都を築く方針を決定し、翌年の延元5年（1340年）4月28日に「興国」への改元を行い、三州宝飯郡御津府（現在の愛知県豊川市御津町）を新たな都としました。

この新都の選定は、南朝の北畠親房による卜占に基づき、熊野本宮と伊勢神宮との串呂線上に神明宮や、後醍醐天皇の副陵である天皇山を建設する流れで進められました。そんな中、御津にて新都が建設されることが確定しました。

新都での生活と行宮

新宮殿が建設されている間、北畠親房は幼い後村上天皇を支援しつつ、蒲郡市相良町にある三河多賀の里を行宮として利用しました。新しい宮殿の完成後、御津府の御所に移り住むこととなります。興国3年（1342年）には寛成親王が天皇山の明澄院に生まれ、この出来事を記念して丹野という地名が名付けられました。

遺跡と地名

三河吉野朝が存在したとされる御津町御馬長床周辺では、「都」「御所」「膳田」など、当時の名残を感じさせる地名が現存しています。これらの地名は、一部地域では持統上皇の聖蹟とも解釈されてきましたが、南朝史学会の藤原石山によれば、それらの地名が持統上皇の聖蹟であるならば、他の地名の成り立ちについては説明が必要だと指摘しています。

松良親王と春宮御所

松良親王にちなんだ地名も存在し、彼は長慶天皇の春宮として玉川御所の春興殿に住んでいました。この地域も松良親王の名に由来する部分が多く、春興殿と呼ばれる場所や、そこに近侍した青木和田尉盛勝が築いた和田城もあったとされています。

三河吉野朝の終焉

三河吉野朝の終焉は、1392年に明徳の和約が成立したことで実質的に決定づけられました。しかし、何よりも重要なのは、1379年から1380年にかけて武家方の圧力が強まった中で、実質的に衰退していったという点です。青木文献によると、天授5年（1379年）9月20日には長慶院法皇が崇厳されるという異変も発生しており、三河吉野朝の運命を大きく変える要因となりました。

参考文献

• - 中西久次郎・家田富貴男『長慶天皇御聖蹟と東三河の吉野朝臣』三河吉野朝聖蹟研究所、1940年
• - 山口保吉『三河吉野朝の研究』山口究宗堂、1940年
• - など、多数の文献を参考にしています。

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