三河島事故

三河島事故

三河島事故は、1962年5月3日に国鉄常磐線三河島駅構内で発生した列車脱線多重衝突事故です。この事故は、その規模と犠牲者の多さから「国鉄戦後五大事故」の一つとして知られています。

事故の概要

事故は、貨物列車の信号無視による脱線から始まりました。まず、下り貨物線を走行していた貨物列車が、停止信号を無視して安全側線に進入し脱線しました。その直後、下り本線を走行してきた普通電車が、脱線した貨物列車に衝突し、同じく脱線しました。さらに、その約6分後、上り線を走行してきた普通電車が、脱線した下り電車に衝突し、多数の乗客を巻き込む大惨事となりました。

発生状況

第一事故：貨物列車の脱線

事故当日、常磐線は地震の影響でダイヤが乱れていました。貨物列車は、通常ならばそのまま下り本線に合流する予定でしたが、先行する普通電車の遅延により、出発信号機手前で待機することになりました。しかし、機関士は停止信号を見落とし、安全側線に進入して脱線しました。

第二事故：下り普通電車の衝突

脱線した貨物列車の数秒後、三河島駅を発車した下り普通電車が脱線現場に接近しました。運転士は非常ブレーキをかけましたが間に合わず、貨物列車の機関車に衝突して脱線しました。この時点で、下り普通電車では軽傷者が出たものの、乗客は線路上に避難を開始しました。

第三事故：上り普通電車の衝突

南千住駅を発車した上り普通電車は、事故発生を知らないまま現場に進入しました。運転士は脱線した下り電車を発見して非常ブレーキをかけましたが間に合わず、下り電車に衝突し、さらに線路上に避難していた乗客を多数轢きました。この衝突により、上り普通電車も大きく脱線し、車両が原型を留めないほどに破壊されました。

原因

直接的な原因は、貨物列車の機関士による信号の見落としとされています。また、事故発生から上り電車の衝突まで約6分の時間があったにもかかわらず、関係者が適切な列車防護措置を怠ったことも、被害を拡大させた要因となりました。

犠牲者

この事故により、死者160名、負傷者358名という甚大な被害が出ました。犠牲者の中には、人気漫才コンビの一員も含まれていました。また、身元不明の犠牲者もおり、現在も寺に葬られています。

事故後の対策

この事故を教訓に、国鉄は安全対策を強化しました。

[自動列車停止装置]の整備: 信号無視による事故を防ぐため、ATSの設置が急ピッチで進められました。
信号炎管・列車防護無線装置の整備: 全列車に防護七つ道具が整備され、常磐線には信号炎管が、その後列車防護無線装置が導入されました。
鉄道労働科学研究所の設立: 職員の労働管理を科学的に行うため、研究所が設立されました。

裁判

事故に関与した列車の乗務員や駅員らが起訴され、裁判が行われました。過失責任が認められ、実刑判決を受けた者もいました。しかし、指令担当員が起訴されなかったため、その責任は追及されませんでした。

その他

三河島事故の展示室が、JR東日本により設置されています。
国鉄は、この事故をきっかけにプロ野球球団を売却しました。
事故を題材にしたドキュメンタリー映画が制作されました。
事故後、「三河島」という地名がマイナスイメージを持たれ、町名が消滅したという説がありましたが、これは俗説であるとされています。
テレビドラマのモチーフとして、この事故が使用されました。
* 動力車操縦者免許の学科試験で、重大事故と安全対策の例としてこの事故が出題されることがあります。

三河島事故は、鉄道の安全運行において、人為的なミスや対策の遅れが大きな事故につながることを示す教訓となりました。この事故を風化させないために、JR東日本では展示室を開設するなど、安全意識の向上に努めています。

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