三田平凡寺

三田 平凡寺

三田平凡寺（みた へいぼんじ、1876年7月10日 - 1960年1月）は、明治大正期において独自の道を歩んだ特異な趣味人であり、珍しい品を蒐集することで知られています。彼の本名は三田林蔵で、裕福な材木商の家庭に生まれました。彼の生涯は、聴覚を失った後に趣味の追求に全面的に打ち込む様子や、さまざまな独特な活動に満ちています。

生い立ちと教育

三田は、東京市芝区車町で育ち、私立小学校に通いました。12歳の時に事故で聴力を失ったことで、日常的なコミュニケーションには筆談を使うようになりました。彼は絵や川柳、漢詩など多くの才能を発揮し、様々な流派の師から学びました。これにより、若いうちから多彩な才能を身につけ、文化的な活動にも積極的でした。

趣味の追求

彼は19世紀末、ローラースケートに熱中し、自宅をスケート場に改装するなどの独特の行動を取ります。また、特に奇抜な行動として、形のいい排泄物を石膏で型取り、金粉を施して保存するなどの事例があります。このように、彼の趣味は常に周囲の注目を集めました。

30歳を過ぎた後、彼は「廃物堂」という自らの趣味に特化したスペースを設け、もともと材木商であった経験を活かして廃材を利用して離れを建てるなど、創造的な活動を続けました。そして、この趣味から「趣味山平凡寺」と名付け、様々な蒐集品を集めながら自身の文化を築いていくことになります。

1909年には趣味文化を広めるために「我楽多宗」を設立し、同じ趣味を持つ仲間を集めました。彼が主宰するこの組織では、全国の趣味人たちと交流し、さまざまな作品の発表や情報交換が行われました。特に多彩な趣味品の収集が行われ、会員の間での趣味の発表は注目を集めました。

影響と業績

彼の蒐集品は色道を中心にさまざまな分野にわたりましたが、特にその中でも「廃物堂」に陳列されている作品は訪問者に大いに評価されました。太平洋戦争中には一時的に疎開し、蒐集した品々は庭に埋める形で保存しましたが、帰宅後には全てが紛失してしまうという不運に見舞われます。

また、平凡寺は易の道にも秀でており、彼の晩年には建築設計の依頼も受けるほどでした。文学にも関心を寄せており、夏目漱石を尊敬し、漱石の『吾輩は猫である』のパロディ作品も執筆しました。このように、彼の活動は多岐に渡り、蒐集・文化活動だけでなく、文学や建築にまで及びました。

家族と子孫

平凡寺は五反田宝塔寺の住職の妹と結婚し、２男４女を授かりました。特に注目すべきは、長女が音楽家として活躍した雨田光平との結婚や、末娘の嘉米子が夏目漱石の長男と結婚したことです。彼らの間に生まれたマンガ・コラムニストの夏目房之介は、平凡寺の血を色濃く受け継いでいると語っています。

三田平凡寺の人生は、独自性と創造性に富んだものであり、多くの人々に影響を与え、今日においてもその業績は語り継がれています。彼の資質は、時折周囲の評価を超えて、独創的な文化活動を展開することへの情熱の表れともいえるでしょう。

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