三田育種場競馬

三田育種場競馬の歴史

三田育種場競馬は、1877年から1890年まで東京都港区芝に存在した三田育種場内で行われていた競馬イベントです。この競馬場は、直径1.1キロメートルの円形コースを特徴としており、当初は馬の品種改良の一環として農務局によって開催されていました。

官営競馬の始まり

競馬自体は1877年から1879年にかけて仮設の馬場で行われていました。その後、1879年12月に常設馬場が完成し、これを記念した競馬が盛大に催されました。この競馬には宮内省や内務省、陸軍が参加し、当時の名馬や騎手が揃い、多くの華族や政府高官が観覧しました。また、音楽演奏を担当する陸軍楽隊が場を盛り上げましたが、この時期の競馬の賞金や観客数に関する詳細な記録は残されていません。

常設馬場での競馬は、洋式競馬と古流の和式競馬が共存しており、当時の文化を反映したイベントとなっていました。このように三田育種場は、競馬がただの娯楽ではなく、公的な社交の場としても機能していたことが特徴です。

興農競馬会社の設立

1879年の常設馬場の成功を受け、興農競馬会社が設立されることとなります。この会社は馬場の使用を許可され、1880年5月には第一回の競馬を開催しました。興農競馬会社は春と秋に定期的に魅力ある競馬を開催し、社交の場としても利用されました。この競馬には多くの政府高官、華族、そして天皇までが参加し、特に1881年には明治天皇が行幸し、興農競馬の名を一段と高めました。

経済的な試行錯誤

興農競馬会社の運営は当初苦しく、馬券の販売が禁止されていたため、入場料や会費、馬の出走料、官からの補助に依存していました。そのため、富くじ付き前売り入場券が販売されるようになり、これが人気を集めました。この仕組みにより、観客数が急増し、経営が一時的に安定しました。しかし、1882年に富くじが禁止されると、収入が激減し、競馬場の活気は失われていきました。

競馬の終焉とその後

興農競馬会社は独自のアイディアを駆使しつつも、1885年に最後の競馬を終えました。その後も細々と競馬が行われていたものの、1890年にはほぼ終了しました。三田育種場の活動は1884年に私立の大日本農会に委託されましたが、1886年には業務が返納され、育種場そのものが閉鎖されることとなります。

現在、港区芝にはかつての競馬場の痕跡はほとんど残っておらず、当時の華やかな祭典の面影は消えてしまいました。しかし三田育種場競馬の歴史は、日本の競馬の発展に寄与し、社交場としての役割を果たしていたことは評価されるべきです。

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