三笑亭夢丸 (2代目)

二代目 三笑亭夢丸：新潟から上京した落語家とその波瀾万丈な人生

二代目三笑亭夢丸は、1983年5月19日、新潟県新発田市に生まれました。父親は学校の校長先生、母親は教員という教育熱心な家庭環境で育ち、新発田市立本丸中学校、新発田中央高等学校を卒業しています。

幼い頃から落語家を志し、高校卒業後、米俵一つを手に東京へ上京。師匠である初代三笑亭夢丸に入門を志願しました。しかし、東京での生活は、新潟とは全く異なっていました。密集した住宅街で、師匠の自宅を探すことから苦労が始まります。やっと見つけた師匠宅は、鍵がかかっていました。新潟では鍵をかけないのが普通だった夢丸にとって、これは予想外の出来事でした。

仕方なく、米俵を肩に担いだまま、師匠宅のドアの脇に立って帰りを待ちました。疲れ果て、米俵を担いだまま正座をしていると、近所の人に不審者と間違われ、警察に通報される事態に。家の中にいた師匠の妻が騒ぎを聞きつけ、表に出てみると、警察に連行されそうになっている夢丸の姿がありました。「うちの子です！」と叫んで夢丸を救出。この出来事をきっかけに、師匠は渋々ながらも夢丸を弟子として受け入れることになったのです。

師事後、前座名は「春夢」として2002年3月に楽屋入り。2006年には第11回岡本マキ賞を受賞し、同年10月には二ツ目昇進、同時に「夢吉」に改名しました。その後、2015年5月、春風亭小柳、三笑亭小夢とともに真打に昇進。そして、師匠である初代三笑亭夢丸の名跡を襲名することとなります。

しかし、襲名には複雑な経緯がありました。二代目夢丸は、師匠から2012年頃に名跡を継ぐことを勧められたものの、一旦は断っていました。しかし、真打昇進が内定した際に、改めて名跡を襲名することを決意したのです。皮肉にも、師匠は2015年3月7日に急逝しており、結果として名跡の生前贈与を受ける形となりました。

真打昇進当初は、先代が使っていた「元禄花見踊り」を出囃子としていましたが、師匠から名跡を譲り受けたことから、兄弟子である小夢に譲り、二ツ目時代に使っていた「万才くずし」に戻しました。

夢丸は落語家としての活動に加え、笛の名手としても知られています。二ツ目時代には、披露興行の口上や、はめ物入りの落語会などでその腕前を披露し、重宝されました。現在も、定席では他の出演者の出囃子に笛を入れるなど、その技を惜しみなく発揮しています。

2011年5月15日には、群馬県片品村文化センターで、福島県南相馬市からの避難者への慰問公演に参加。ボランティアスタッフによる音響トラブルでマイクが使えなくなるというアクシデントに見舞われましたが、800人規模の大ホールでマイクなしで落語を演じきった経験も持ちます。

メディア出演も積極的に行い、テレビでは「アウトバーン マル暴の女刑事・八神瑛子」（2014年8月9日、フジテレビ）に出演。ラジオでは「SHIBA-HAMAラジオ」（2018年11月29日、文化放送）に出演するなど、落語家としての活動範囲を広げています。また、ポッドキャスト「新ニッポンの話芸 ポッドキャスト」にもゲスト出演しています。CDにも多数収録されており、「新宿末廣亭深夜寄席～骨太肉厚編～」「親子できこう 子ども落語集」「恐笑噺～馬るこ・龍玉～」などがあります。

2024年には初めて弟子を迎え入れ、後進の育成にも力を注いでいます。新潟から上京し、数々の困難を乗り越えて落語家として成功を収めた二代目三笑亭夢丸の今後の活躍に期待が高まります。

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