三笠屋百貨店

三笠屋百貨店の歴史と成長

三笠屋百貨店（みかさやひゃっかてん）は、大阪府大阪市天王寺区上本町にかつて存在した百貨店です。この百貨店は、1922年に岡山県からやって来た実業家、蜂谷経一の手によって創業されました。三笠屋は年々郊外が進展する都市に目をつけ、小資本で運営できる食料品店としてスタートしました。

創業の背景

蜂谷は1918年の北米視察で、食料品店の成功が高い資金回転率によって可能であることを知り、実際に自身の手で店舗を運営する覚悟を決めました。大阪市内での出店候補地を探し、最終的に奈良への電車の路線にある上本町、通称「上六」を選択しました。そこに約10坪の土地を確保し、1922年に三笠屋食料品店として開業しました。

アメリカ式営業スタイルの導入

三笠屋百貨店の営業スタイルは、当時の日本では珍しいアメリカ的なスタイルでした。開業当初は、食料品店が中心であり、缶詰やレーズンの量り売りが行われ、さらに上階にはレストランも併設されていました。洋服を着た店員が接客し、米国の雰囲気を色濃く表現しました。このユニークなスタイルは、チャールズ・チャップリンの写真が入った広告とともに広く知れ渡り、繁盛の要因となりました。

成長と拡張

開業当初、店舗は6間の間口でしたが、その後非常に成長し、1924年には隣接地を借り入れて間口を12間に拡張しました。さらに、1926年には大阪電気軌道の新たなターミナルビル「大軌ビル」に入居し、三笠屋百貨店として再スタートを切ります。このビルは7階建てで、広い売り場を持っていました。

企業化と発展

1927年には資本金100万円をもって株式会社三笠屋百貨店に法人化し、大きな成長を果たします。従業員数は約120名に達し、1931年頃の業績は年商が22万円弱で、利益率が14〜15％という高い水準を記録しました。百貨店としての地位を確立し、地域の名士ともなった三笠屋は、当時の日本の百貨店業界に多大な影響を与えました。

辞めなければならなかった理由

しかし、1935年に大阪電気軌道が新たに百貨店を開業することが決定され、三笠屋百貨店は退去を余儀なくされます。最初からそのような契約上の約束があったため、同年末に営業を終了しました。これにより、三笠屋百貨店としての歴史は幕を閉じたのです。

新たな挑戦

営業を終えた三笠屋はなおも存続し続け、1936年に道頓堀にある丸萬食料品店を改装し、地上5階、地下1階の新たな店舗を開店しました。この新しい店舗は、かつての百貨店とは異なり、食堂や喫茶などに特化した営業形態に変わっていました。伊丹専務によれば、これは「百貨店から雑貨や呉服を振り落とし、食堂と食料品だけになった三笠屋」とも言えるものでした。

新しい店舗は、規模や品揃えが縮小していたものの、1941年には上六時代の約1.5倍の利益を上げるなど、意外な成功を収めていました。三笠屋はその後も、地域の人々に愛される店として存在し続けたのです。

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