三菱ふそう・Fシリーズ

三菱ふそうFシリーズ大型トラック：日本の道路を駆けた名車

1973年から1983年まで、三菱自動車工業（現：三菱ふそうトラック・バス）が製造した大型トラック、三菱ふそうFシリーズ。その歴史と特徴、そして後世への影響について詳しく見ていきましょう。

Fシリーズの誕生と革新的なデザイン

それまでの型式体系から一転、アルファベットのみで車系を表すようになったFシリーズは、三菱ふそう大型トラックの歴史において重要な転換期となりました。このアルファベット表記体系は、後のザ・グレートやスーパーグレートにも受け継がれ、三菱ふそう大型トラックのアイデンティティを確立する上で大きな役割を果たしました。

Fシリーズの最大の特徴は、なんと言ってもそのシャープなデザインです。クリスタルカットと呼ばれる直線的なキャビンデザインは、当時のトラックデザインに新鮮な風を吹き込みました。セミトラクタタイプには、ローマウントキャブとハイマウントキャブの2種類が用意され、ユーザーの多様なニーズに応える柔軟性も持ち合わせていました。

さらに、Fシリーズはトラックにおいて画期的な試みとして、カスタムグレードを設定した最初の車種の一つでした。ファブリックシートやエアコンといった、それまでトラックではあまり見られなかった快適装備が充実しており、ドライバーの居住性を大幅に向上させました。このカスタムグレードは、後のトラック開発にも大きな影響を与え、より快適で高度な装備が求められる土壌を作ったと言えるでしょう。

韓国での生産とグローバルな展開

興味深いことに、Fシリーズは日本のみならず、韓国でも生産されていたようです。MBC公式YouTubeチャンネルに残されているアーカイブ映像には、グリルに「HYUNDAI」エンブレムが装着されたFシリーズと思しき大型トラックが多数確認できます。これは、当時の三菱ふそうと現代自動車との間で、技術協力や生産委託が行われていたことを示唆しており、Fシリーズがグローバルな舞台で活躍していたことを物語っています。

進化を続けるFシリーズ：技術革新の歴史

Fシリーズの登場は1973年12月27日。Tシリーズの後継車として、V型6気筒およびV型8気筒の予燃焼室式エンジン6DC2と8DC2、8DC6を搭載して市場に投入されました。その後も継続的な改良が加えられ、1975年にはエンジンを直接噴射式に変更（6D20、8DC4、8DC7、8DC8、10DC8）。1976年には8トン積みFP型を追加、1977年には低床4軸車FS119型を追加するなど、ユーザーニーズに合わせたバリエーションも拡大していきました。

1979年には、フロントグリルを黒一色に変更したマイナーチェンジを実施（通称「ブラックマスク」）。ヘッドランプの位置を下げるなど、安全性を向上させる改良も施されました。また、排出ガス規制に適合したエンジンや、直列6気筒ターボエンジン、新開発の8DC9型NA・ターボエンジンも追加されました。これらの改良により、Fシリーズは時代の要請に応えながら、その進化を続けました。

ザ・グレートへのバトンタッチと永遠の記憶

1983年7月、Fシリーズはフルモデルチェンジを行い、その後の後継車として「ザ・グレート」と名付けられました。しかし、Fシリーズは単なる旧型車として忘れられることはありません。その革新的なデザイン、快適な装備、そしてグローバルな展開は、日本のトラックの歴史に大きな足跡を残しました。特に、映画「トラック野郎」シリーズへの出演は、Fシリーズを日本の文化の一部として深く印象づけています。劇中、菅原文太演じる星桃次郎が駆る「一番星号」として、1975年式のFU型が登場しました（2作目以降）。

Fシリーズの系譜：FKシリーズ、ザ・グレート、スーパーグレート

Fシリーズの系譜は、同時期に製造されていた中型トラックのFKシリーズ、そして後継車であるザ・グレート、スーパーグレートへと受け継がれていきます。FKシリーズの後期型は、大型車のFMとキャブを共有化しており、Fシリーズの技術がこれらの車種にも反映されていることを示しています。これらの車種は、Fシリーズが築き上げた技術やデザインを基盤として、更なる進化を遂げ、現在に至るまで三菱ふそう大型トラックの進化を牽引しています。

結論：日本のトラック史に刻まれた名車

三菱ふそうFシリーズ大型トラックは、単なる輸送手段を超えた存在でした。革新的なデザイン、快適な装備、そしてグローバルな展開は、日本のトラック業界に大きな影響を与え、後のトラック開発の礎を築きました。その魅力は、現在でも多くのファンを魅了し続けています。

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