三菱・エクリプス

三菱 エクリプス：時代を駆け抜けたクーペの系譜

三菱自動車がかつて北米市場を中心に展開していたクーペ、エクリプス。その誕生から終焉までを紐解きます。

誕生の背景：北米市場とクライスラーとの協業

1980年代後半、三菱自動車は北米市場でスポーツカーのラインナップを強化する必要に迫られていました。当時、小型スポーツカー（ポニーカー）の人気が高まる中、ライバルメーカーが強力なモデルを投入する一方で、三菱のスタリオンは訴求力に欠けていたのです。

また、提携関係にあったクライスラーも、販売していたレーザーの後継車開発を検討していました。両社の思惑が一致し、新型スポーツカーの開発で協業することになります。輸入車規制への対応も課題だったため、両社は合弁会社「ダイアモンド・スター・モーターズ（DSM）」を設立し、新型スポーツカーの開発に着手しました。

ギャランをベースに開発されたエクリプスは、こうして誕生しました。北米市場以外でも展開され、4代目以外の全世代が日本にも導入されましたが、左ハンドルのみの設定で販売台数は限られていました。

初代（1989年-1995年）：ターボモデルで人気を博す

1989年、スタリオンの後継モデルとしてアメリカで発売された初代エクリプス。ギャランのコンポーネントをベースとしたFFと4WDの駆動方式、そして4G63型エンジンを搭載し、北米市場で高い人気を誇りました。

グレードは、1.8L NAエンジンの「ベース」、2.0L NAエンジンの「GS」、2.0Lターボの「GS-T」（FF）、そして2.0Lターボの「GSX」（4WD）がラインナップ。ターボモデルは、クライスラー版であるプリムス・レーザー、イーグル・タロンにも存在しましたが、エクリプスはトリムやオプションの組み合わせが豊富で、より廉価なターボモデルも選択可能でした。

エクステリアは、当時主流だったリトラクタブル・ヘッドライトを採用。インテリアは、操作性に優れたデザインが特徴でした。また、当時のクーペとしては大容量のラゲッジスペースも確保されていました。

1992年にはマイナーチェンジが行われ、フロントマスクが固定ライトに変更されました。初代エクリプスは、映画「ワイルド・スピード」に登場するまで、アメリカで最も人気のある三菱車でした。

2代目（1994年-1999年）：流麗なデザインと洗練された足回り

1994年、2代目エクリプスが登場。外観は丸みを帯びた流麗なデザインとなり、6代目ギャランのコンポーネントを流用していました。エンジンは引き続き4G63型を搭載し、出力も向上。足回りは、フロントにダブルAアームサスペンション、リアにマルチリンクシステムを採用し、洗練されました。

グレード展開は、クライスラー製エンジン搭載の「RS」、NAエンジンの「GS」、ターボエンジンの「GS-T」（FF）と「GSX」（4WD）がラインナップ。インテリアは、初代に比べて落ち着いたデザインとなりました。また、デュアルエアバッグとABSが標準装備となり、安全性が向上しました。

1996年にはフェイスリフトが行われ、コンバーチブルモデルのスパイダーが追加されました。2代目エクリプスは、初代ほどの人気は得られませんでしたが、2001年に映画「ワイルド・スピード」に登場したことで再び注目を集めました。

3代目（1999年-2006年）：ラグジュアリー志向への転換

1999年、3代目エクリプスが登場。北米生産のギャランのプラットフォームを流用し、駆動方式はFFのみとなりました。また、4G63エンジンやターボモデルは廃止され、代わりにV6エンジンや直4エンジンが搭載されました。

従来モデルよりもラグジュアリー志向となり、パフォーマンスカーとしての性格は落ち着きました。販売価格も上昇し、クーペは2005年に販売終了となりました。日本ではスパイダーのみが左ハンドルのまま販売されましたが、2006年に販売終了となり、三菱のラインナップからクーペタイプの車種が消滅しました。

4代目（2005年-2012年）：北米市場専用モデルとして終焉

2005年、4代目エクリプスが北米で発売。V6エンジンと直4エンジンがラインナップされましたが、日本やヨーロッパでは販売されませんでした。2012年に生産を終了し、エクリプスの歴史に幕を閉じました。

車名の由来：18世紀の競走馬

エクリプスの車名は、18世紀イギリスの競走馬「エクリプス」に由来します。「エクリプス」は日食・月食の意味を持ち、その競走馬も日食当日に生まれたことに由来します。

2017年に発表されたクロスオーバーSUVのエクリプスクロスは、このエクリプスの名を継承しています。

エクリプスは、時代に合わせて進化を遂げたクーペとして、その名を自動車史に刻んでいます。

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