三菱・シルバーピジョン

シルバーピジョンの歴史と特徴

シルバーピジョンは、中日本重工業が戦後に製造したスクーターシリーズで、当時の日本の交通手段として多くの市民に親しまれました。その名は、平和の象徴であるハトにちなんで付けられたものです。このシリーズは1946年に製造が始まり、当初はC-10型というモデルが登場しました。これは、アメリカのサルスベリー社のスクーター「モーターグライド」を参考にしたもので、112ccの2ストローク単気筒エンジンを搭載していました。

初代モデルの登場によって、シルバーピジョンは日本の交通シーンに革命をもたらしました。1948年にはC-11型にモデルチェンジされ、当時の皇室へも献上されるなど、その地位を確立していきます。1950年代には、シルバーピジョンは日本国内のスクーター市場で約45%のシェアを誇り、特に1950年から1952年までの3年間には「モーターサイクリスト」誌の最優秀デザイン賞を受賞するなど、多くの反響を呼びました。

シルバーピジョンは、時代とともに進化を続けており、モデルも多数展開されました。特に、排気量の増加やエンジンの改良に伴い、車体の大型化も進みました。新たなエンジンとして4ストロークエンジンや直列2気筒エンジンが搭載され、バリエーションも豊富になりました。最も多く販売されたモデルは1960年のC-200型で、約38,000台が売れたことが記録されています。

しかし、1961年に三菱が初の量産軽四輪自動車の販売を開始したことが、シルバーピジョンの運命を変えてしまいました。1962年には水島製作所のスクーター製造が終了し、四輪車へのシフトが進みました。これは、四輪市場での競争が激化する中で、シルバーピジョンの生産を見直す決断をもたらしました。1964年には、社名が変更されたことに伴い、最終モデルであるC-140型およびC-240型の生産も終わり、72年の長い歴史に幕を下ろすこととなりました。

シルバーピジョンは、総生産台数463,000台以上という大きな数字を誇っており、多くのモデルが生み出されました。これらのモデルには、C-10、C-11、C-12、C-13などの基本的な型式に加えて、C-140、ボビー200、ボビー300なども含まれ、いずれも時代のニーズに応じた工夫が盛り込まれていました。

日本のモータリゼーションの進展に大きく寄与したシルバーピジョンは、今もなお多くの人々の記憶に残る存在です。その存在は、当時の人々にとってただの乗り物以上の意味を持つものであり、平和を象徴する名にふさわしいエピソードが詰まっています。

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