三菱化学生命科学研究所(みつびしかがくせいめいかがくけんきゅうじょ)は、かつて日本の
生命科学研究を牽引した基礎研究機関です。
東京都町田市にその拠点を置き、親会社である
三菱化学の子会社として運営されていました。研究所は
1971年に設立され、
2010年に閉鎖されるまで、約40年間にわたり日本の科学技術振興に貢献しました。「L研」や「生命研」という通称でも広く知られていました。
設立と歴史
研究所は、
1971年6月に当時の三菱化成工業(後の
三菱化学)が会社設立20周年を記念する事業の一環として、「三菱化成
生命科学研究所」の名称で産声を上げました。これは、民間企業が基礎研究分野に積極的に投資する、当時としては画期的な取り組みでした。
その後、
1994年10月に親会社の組織再編に伴い、
三菱化学が発足したことを機に、研究所の名称も「
三菱化学生命科学研究所」と改められました。
特徴と意義
三菱化学生命科学研究所の最大の特長は、日本の
生命科学研究がまだ揺籃期にあった時代に、民間企業の支援のもと、純粋な基礎研究を追求する機関として発展を遂げた点にあります。営利を目的としない基礎的な探求に重点を置いたその姿勢は、当時の日本の研究機関としては比較的珍しく、国際的な視点から見てもユニークな存在として評価されていました。多様なバックグラウンドを持つ研究者が集い、自由な発想に基づいた学際的な研究が推進されたことも、多くの重要な発見や優れた人材の輩出につながりました。
閉鎖
しかしながら、親会社である
三菱化学は、研究所が設立当初に掲げた使命を十分に達成したとの判断を示し、
2008年3月に研究所を2年後に解散する方針を公表しました。この決定に基づき、
三菱化学生命科学研究所は、予告されていた通り
2010年3月をもって、惜しまれつつその活動に幕を閉じました。研究所の建物があった跡地には、現在、
日本大学の
学生寮である「バンデリアン町田」が建てられています。
所在地
研究所が活動していた当時の所在地は以下の通りです。
〒194-8511
東京都町田市南大谷11
公共交通機関を利用する場合、
小田急小田原線 玉川学園前駅から徒歩で約20分程度の場所に位置していました。
歴代所長
研究所の歴史において、その運営と研究活動を率いた歴代の所長は以下の通りです(就任期間順)。
江上 不二夫(
1971年 - 1979年)
丹羽 丹(1980年 - 1985年)
今堀 和友(1986年 -
1994年)
永井 克孝(1995年 - 2003年)
関谷 剛男(2004年 -
2010年)
著名な研究者・OB/OG
三菱化学生命科学研究所からは、日本の科学界をはじめ、様々な分野で活躍する多くの優れた人材が輩出されました。以下はその一部です。
大島 泰郎
水野 猛
中村 桂子
柳澤 桂子
柴 忠義
榊 佳之
吉岡 崇仁
米本 昌平
* 和田 英太郎
短期間の歴史ではありましたが、
三菱化学生命科学研究所は日本の
生命科学の礎を築く上で重要な役割を果たし、その功績は今もなお記憶されています。