三越神戸支店

三越神戸支店：栄光と挫折の物語

1925年、兵庫県神戸市中央区元町に「元町デパート」が開業しました。地元商人の井上繭太郎氏を中心とした共同事業で、神戸港の開港による活況を背景に、近代的な百貨店への市民の需要に応える形で誕生しました。大丸神戸店が元町の東側に位置していたのに対し、元町デパートは西側を代表する存在となりました。しかし、開業からわずか半年で経営破綻という苦難を経験します。

三越による買収と神戸における地位確立

経営破綻した元町デパートは競売にかけられそうでしたが、三越大阪支店が買収に乗り出します。1926年7月、元町デパートの建物を継承する形で「三越神戸分店」が開業。その後、支店へと昇格し、神戸における百貨店としてその地位を確立しました。西元町は当時、神戸の都心として栄え、神戸駅や市役所にも近接していました。三越神戸支店は、西元町駅と地下道で直結するなど、地の利を生かした運営を行い、ハーバーランド開業以前は国鉄神戸駅前の顔とも言える存在感を示しました。

三宮への移転計画の失敗と衰退

しかし、1930年代に入ると、鉄道網の発達に伴い、神戸の都心は元町から三宮へと移り変わります。三宮には、そごう神戸店（後の神戸阪急）や阪急百貨店が進出し、賑わいは三越神戸支店から離れていきました。三越も三宮への移転を計画しますが、三宮阪神ビルの建設時に入居する契約を断念し、戦後の再進出計画も地元商店街の反対で頓挫します。

1980年代の閉店

1980年代に入ると、三越は経営悪化に直面。三越神戸支店は、最小規模ながら累積赤字が70億円に達しており、閉店が決定されました。1983年8月、翌年2月末の閉店が発表されると、神戸市や地元商店街は強い反発を示しました。三越神戸支店の売上高は、同時期のそごう神戸店と比較して大幅に低く、神戸市内の百貨店売上シェアでもわずか4.5%にとどまっていました。競合他店が梅田地区などへの進出を進める中、三越神戸支店は時代に取り残されてしまったのです。1984年2月29日、三越神戸支店はついに閉店しました。

閉店後も続く三越の神戸

閉店後、跡地にはホテルが建設されましたが、阪神・淡路大震災で被災し廃業。その後、再開発が行われました。三越は神戸から完全撤退したわけではなく、外商売上維持のため、元町に小型店舗「パルパローレ三越」を開設しましたが、2004年に閉店。その後、神戸三田プレミアム・アウトレットにセレクトショップを出店しましたが、それも2010年に閉店しています。1992年には、西宮市への出店計画もありましたが、バブル崩壊などを背景に実現しませんでした。

まとめ

三越神戸支店は、時代の変化に対応できず、残念ながら閉店という結末を迎えました。その歴史は、神戸の商業史、そして日本の百貨店業界の変遷を象徴する事例として、現在も語り継がれています。元町商店街の西側を代表する存在だった三越神戸支店の盛衰は、時代の流れと競争の激しさ、そして都市開発の動向を浮き彫りにするものです。 その跡地は現在、新たな姿へと生まれ変わっていますが、かつて存在した百貨店の面影を偲ぶ人々も少なくないでしょう。 三越神戸支店は、地元の人々の記憶に深く刻まれた、一つの時代を象徴する存在であったと言えます。

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