三音英次

三音 英次

三音 英次（みつね えいじ）は、1939年に生を受け、2003年にその生涯を閉じた歌手であり、芸人でもありました。本名を泰 英二といい、時には「三音英二」と表記されることもありました。昭和40年代、彼は芸能の世界で確かな存在感を示しました。

彼の人生は、幼少期から極めて過酷なものでした。大分県で生まれた三音は、わずか4歳で母を、そして6歳で父を相次いで失います。天涯孤独となった彼を一時引き取った叔父もまた世を去り、頼るべき身内を全て失うこととなります。食べるために、働く場所を求めて大阪へと移り住んだ彼は、日雇い労働者の集まる街として知られる釜ヶ崎に身を寄せ、厳しい生活を送りました。

苦労を重ねる中、三音は芸能の世界へと足を踏み入れることを決意します。1962年12月、大阪・新世界にあった劇場、新花月の舞台で、彼は芸人としての一歩を踏み出しました。自身の芸の根幹に河内音頭を据え、音頭取りという肩書きで活動を開始。この時、三味線奏者として国府 春子氏、太鼓奏者として伊藤 輝夫氏が彼の舞台を支えました。

やがて彼の名は広く知られるようになります。特に1967年に発表した楽曲『釜ヶ崎人情』は大きな反響を呼び、60万枚という驚異的なセールスを記録する大ヒットとなりました。この歌は、彼自身が身を置いた釜ヶ崎の現実と、そこで生きる人々の情け深さや哀愁を歌ったものであり、多くの人々の共感を呼びました。このヒットにより、彼は昭和40年代の歌謡界で確固たる地位を築きます。

『釜ヶ崎人情』以外にも、彼の代表的な楽曲として以下のような作品があります。

お天道さん見ててんか
人生あばれ太鼓
根性一筋
男一文字
アンコ暮し
どたんこ人生

これらの楽曲からも、彼の歌が庶民の生活や心情に寄り添い、力強く生きる姿を応援するようなメッセージを持っていたことが伺えます。

しかし、彼の人生は平穏では終わりませんでした。芸能界での成功を収めた後、彼は突如としてこの世界から身を引き、タクシー運転手として新たな道を歩み始めます。しかし、ある時、速度違反の取り締まりに用いられた警察車両に対し放火するという衝撃的な事件を引き起こし、有罪判決を受けて服役することとなります。波乱に満ちた、まさに歌の詞のような人生を送った三音英次は、2003年に病（癌）のため、64歳でその生涯の幕を閉じました。

幼くして孤児となり、苦界から身を起こして一世を風靡するも、再び人生の転落を経験した三音英次。彼の残した『釜ヶ崎人情』をはじめとする楽曲は、逆境にあってもたくましく生きる人々の心を捉え、今なお多くの人々の記憶に残っています。

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