上原淳

上原 淳

上原 淳（うえはら あつし、1964年〈昭和39年〉6月19日生まれ）は、日本の運輸・国土交通行政に長く携わった官僚です。兵庫県加古川市で育ち、兵庫県立加古川東高等学校を経て、1987年3月に東京大学経済学部を卒業しました。同年4月、国家公務員採用Ⅰ種試験（経済）に合格し、旧運輸省へ入省しました。

キャリアの概観

運輸省入省後、上原氏は多様な部署で経験を積み重ねました。初期には、1992年2月に運輸省近畿運輸局運航部輸送課長として地方勤務を経験。その後、運輸省鉄道局国有鉄道清算業務指導課土地処分対策室補佐官を務めるなど、国鉄改革の後始末に関わる業務にも携わりました。1994年からは外務研修を経て、1995年4月に外務省在タイ日本国大使館に二等書記官として赴任。1997年4月には一等書記官に昇進し、約2年間、タイでの外交実務を通じて国際感覚を磨きました。

帰国後、運輸省航空局監理部航空事業課補佐官（1998年7月）を経て、2000年8月からは奈良県企画部交通政策課長、翌2001年4月には奈良県企画部次長（国際・学研協力担当）として地方自治体での行政運営にも関わりました。国土交通省発足後は、総合政策局環境・海洋課地球環境対策企画官（2003年7月）として地球環境問題に取り組み、大臣官房総務課企画官（2004年7月、2005年8月）を務めるなど、本省の中枢部門で政策企画に携わりました。

自動車交通行政分野では、自動車交通局総務課企画室長（2006年7月）や貨物課長（2007年7月）を歴任し、物流政策などに深く関与しました。また、2008年8月には谷垣禎一国土交通大臣の秘書官事務取扱として大臣を補佐し、その直後の2008年9月には航空局空港部関西国際空港・中部国際空港監理官に就任し、主要国際空港の整備・運営に関わる重要なポストを務めました。この後も、大臣官房参事官（近畿圏・中部圏空港担当、2010年4月）や、内閣官房総合海洋政策本部事務局参事官（2010年8月）として、幅広い分野で専門性を発揮しました。

2011年8月には国土交通省大阪航空局次長を務め、その後は新関西国際空港株式会社へ出向し、経営企画部長（2012年4月）、経営戦略室長（2012年7月）として、空港運営会社の戦略策定に携わりました。省に戻ってからは、総合政策局公共交通政策部交通計画課長（2013年7月）として公共交通政策の企画立案に、観光庁総務課長（2014年7月）として観光行政の推進に貢献しました。

海上保安庁・国土交通省での要職

キャリア後半は、海上保安庁と国土交通省の要職を歴任しました。2015年7月に海上保安庁総務部政務課長に就任した後、国土交通省大臣官房総務課長（2016年6月）を経て、2017年7月には海上保安庁総務部長に昇進しました。そして、2019年7月9日には海上保安庁の組織運営を担う重要なポストである海上保安庁次長に就任しました。

2020年7月21日からは、国土交通省鉄道局長を務めました。鉄道局長就任に際して行われた専門誌向けの会見では、日本の物流を支えるJR貨物のサービス向上や、人工知能（AI）をはじめとする先進技術の導入による鉄道分野のイノベーション推進に強い期待を表明しました。加えて、大規模災害発生時における国民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるため、代替輸送手段としての鉄道ネットワークのレジリエンス強化についても、積極的に取り組む姿勢を示しました。

2023年7月11日には、国土交通省の事務方トップの一人である国土交通審議官に就任し、省全体の重要政策に関与しました。約1年間にわたり審議官を務めた後、2024年7月1日をもって国土交通省を辞職しました。

まとめ

上原氏は、運輸省入省以来、約37年間にわたり、鉄道、航空、自動車交通、海事、観光、環境、国際関係など、国土交通行政の幅広い分野で要職を歴任しました。地方自治体や在外公館、省外団体での経験も通じ、多角的な視点から公共交通網の整備、物流の効率化、国民生活の安全確保など、日本の社会基盤を支える様々な政策の推進に貢献しました。そのキャリアは、国交省の多様な業務領域を網羅するものであり、同省の政策立案・執行における豊富な経験と知見を持つ官僚として知られています。

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