上土シネマ

上土シネマの歴史

上土シネマは、長野県松本市大手4丁目に位置していた映画館で、平形興行株式会社が経営していました。200席の座席を備え、地域の人々に親しまれてきました。

松本電気館の誕生

1917年（大正6年）、松本市の住民有志が出資し、松本電気館として開館しました。当初は地域の人々の娯楽の場として賑わい、その後、昭和初期に平形興行に経営が譲渡されました。平形興行のもとでは、日活系の作品を中心に上映し、多くの映画ファンを魅了しました。

松本東映劇場への変遷

1950年代には松本オリオン座という名称で運営されていましたが、1950年代末には東映の直営館となり、松本東映劇場と改称しました。1968年（昭和43年）には大規模な改修が行われ、1スクリーン200席の映画館として生まれ変わりました。この時期には、東映の看板作品が数多く上映され、映画文化の発展に貢献しました。

上土シネマとしての再出発

2002年（平成14年）、東映直営館からフリー館へと転換し、上土シネマと改称しました。これにより、東映作品に限らず、様々なジャンルの映画が上映されるようになり、地域住民の多様なニーズに応える映画館となりました。2008年（平成20年）の『映画館名簿』によると、経営は平形興行、経営者は平形芳朗であり、198席の映画館でした。しかし、周辺環境の変化や建物の老朽化が進み、2008年（平成20年）11月24日をもって閉館することになりました。

閉館とその後

閉館の際には、同年11月22日から24日まで『宮本武蔵』、『仁義なき戦い』、『鉄道員（ぽっぽや）』などの名作が特別上映され、91年の歴史に幕を閉じました。平形興行が松本市内で経営していたもう一つの映画館、松本エンギザも2010年（平成22年）6月27日に閉館し、松本市から平形興行の映画館は姿を消しました。

閉館後、大正時代に建てられた建物は現在も残っており、2014年（平成26年）頃からは商店街振興組合が建物の活用を模索しています。2016年（平成28年）には、松本大学観光ホスピタリティ学科の教授や学生もこの構想に加わり、建物の新たな活用方法を検討しています。同年には建物が松本市近代遺産に登録され、その歴史的価値が認められました。

2021年（令和3年）10月にはシャッターが開き、閉館時の特別上映会の看板やスケジュールが公開され、関係者の間では建物の再活用に向けた動きが進んでいます。2022年（令和4年）1月から2月に開催されたマツモト建築芸術祭では、上土シネマが会場の一つとなり、現代美術家の鴻池朋子が作品を発表しました。

上土シネマは、映画館としての役割を終えた後も、地域の人々の記憶に残り続けています。その建物は、松本市の歴史と文化を伝える貴重な遺産として、今後も大切にされていくことでしょう。

もう一度検索