松本エンギザ

松本エンギザ：121年の歴史を閉じた松本の映画館

松本エンギザは、長野県松本市大手4丁目に位置していた映画館です。その歴史は古く、1889年に寄席「松玉亭」として誕生しました。その後、芝居小屋「大正座」への改称、そして1916年に「演伎座」として映画上映を開始し、1921年に映画館へと完全に転換しました。運営は平形興行株式会社が行っていました。

歴史

寄席から映画館へ

松本エンギザの前身である寄席「松玉亭」は、松前屋玉五郎によって1889年に設立されました。1913年には赤羽幸重が買収し、芝居小屋「大正座」と改称。1916年には大池米作が買収し「演伎座」となり、活動写真の上映を開始しました。そして1921年、映画館としての道を歩み始めました。この間、後に塩尻東座の経営者となる合木茂夫が、塩尻東座に赴任する前にエンギザに勤務していた時期がありました。

全盛期と多館化

日本の映画館数がピークを迎えた1960年11月中旬には、隣接地に鉄筋コンクリート造3階建てのビルを建設。「演伎座東宝」と「演伎座日活」の2館体制となりました。しかし、日活がロマンポルノ路線に転換すると、「エンギザ」に館名を統一し、番組編成をフリー化しました。

リニューアルと競争激化

1997年11月18日、鉄筋コンクリート造4階建てのビルに建て替えられ、1階と2階には飲食店が入り、3階に2スクリーンの映画館が誕生しました。この建て替え直前には、『もののけ姫』の大ヒットにより、近隣の広場を埋め尽くすほどの行列ができ、近隣店舗から苦情が寄せられました。その結果、入れ替え制が導入されました。

2000年代に入ると、松本市郊外にシネマコンプレックス「アイシティシネマ」が開館。2008年には、松本市中心街の老舗映画館「松本テアトル銀映」が閉館し、郊外にはシネコン「シネマライツ8」が開業するなど、競争が激化しました。2001年3月期には約2億7500万円あった平形興行の売上高は、2009年3月期には約2億円にまで落ち込みました。

突然の閉館

2010年6月27日、松本エンギザは突然営業を終了しました。平形興行は翌日の6月28日に事業を停止し、自己破産申請の準備に入り、121年の歴史に幕を閉じました。2014年12月には跡地にマンション「プレシス松本城公園」が竣工しています。

中心市街地の映画館の変遷

松本市内では、2004年に「松本中劇」と「松本東宝セントラル」、2008年には「松本テアトル銀映」と「上土シネマ」が閉館しており、松本エンギザの閉館によって中心市街地から映画館がなくなりました。しかし、7年以上経った2017年9月21日、イオンモール松本にシネコン「イオンシネマ松本」が開館し、中心市街地に映画館が復活しました。

基本情報

所在地: 長野県松本市大手4丁目9-21
アクセス: アルピコ交通バス「大名町」停留所から徒歩約3分、「東町」（国道143号沿い）停留所から徒歩約3分
運営: 平形興行株式会社
代表: 平形芳朗
支配人: 平形友宏（いずれも2010年時点）
スクリーン: 閉館時は5スクリーン
音響 DTS・SRD（『シアター4』のみDTS・SRD・SRD-EX）



松本エンギザは、長きにわたり松本市民に愛された映画館でしたが、時代の変化とともにその役割を終えました。しかし、その歴史は松本市の映画文化を語る上で欠かせないものとなっています。

外部リンク

松本エンギザ 港町キネマ通り

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