上奏

上奏（じょうそう）について

上奏とは、天子である皇帝や天皇に向けて意見や事情を申し上げることを指します。また、これは「奏上」とも呼ばれています。上奏は、歴史を通じて、国家の政治や行政に重要な役割を果たしてきました。

日本の上奏制度

日本では、律令制度という法制度が確立されていた奈良時代や平安時代において、上奏はあまり多く行われませんでした。これは、訴訟に関する上奏については公式に規定がされていたものの、実質的な終審裁判所としての機能を担っていた太政官が機能していたためです。しかし、政事、特に人事に関する上奏は数多くみられました。これには、主に中務省、式部省、兵部省が担当する三省における申政が中心となっていました。

日本の政治の中心が祭儀空間であった紫宸殿から、天皇の日常空間である清涼殿に移るにつれ、上奏の形式も変化しました。律令制以前から、女官が取次役として関わっていた「闈司奏」や「内侍伝奏」に代わり、清涼殿においては蔵人が上奏を行う形式が確立されました。このような変化は、政事のよりスムーズな進行を促す役割を果たしました。

大日本帝国憲法下の上奏

大日本帝国憲法の施行により、官庁や帝国議会などが天皇に対して様々な意見や希望を上奏する機会が増えました。この際、法律や勅令の公布についても上奏が行われることが定められ、内閣総理大臣が関与することとなりました。一般の臣民が天皇に意見を述べることは「請願」となり、法律上の根拠を持つものでなければ上奏と見なされませんでした。

国務大臣や各省大臣は、自身の担当する政務についていつでも上奏することが可能で、議院から直接宮内大臣を通して上奏することもありました。会計検査院による上奏も存在し、国家の財務に関する報告が行われいました。

日本国憲法と上奏

日本国憲法では、天皇が主に法律や政令を公布する役割を担っています。ここでも上奏は重要であり、法律や政令が閣議決定された後、上奏箱という特殊な箱に文書が収められ、宮内庁へと運ばれます。最終的に天皇が署名し、正式な承認が行われる一連の流れがあります。この過程を「裁可」と言い、天皇は印章を用いてその承認を示します。

このように、上奏は歴史的に見ても、国家運営の重要な流れの一部であり、時代や法律に応じてその形式や方法が変わってきました。また、上奏とは異なる形で情報が伝達される「内奏」という役割も存在します。

中国における上奏

中国の中華王朝においても上奏は重要な役割を果たしました。官僚はこの権限を利用して権力を握ることがあり、権力闘争がしばしば行われました。唐代における法制のもとでは、意見を述べる上表と訴訟に関する上表という二つの大きな側面があり、官僚たちはこの制度を利用して、政事や訴訟に関与していました。

以上のように、上奏は日本や中国の政治文化の中で重要な要素であったことがわかります。上奏が行われる背景には、国家の運営や政治の透明性が求められる社会的な土壌があり、上奏を通じて天皇や皇帝への直接的な意見発表が促されてきた歴史があります。

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