上宮聖徳法王帝説

『上宮聖徳法王帝説』について

『上宮聖徳法王帝説』（じょうぐうしょうとくほうおうていせつ）は、日本の歴史における重要な文献の一つで、厩戸皇子、すなわち聖徳太子に関する伝記です。この作品は、現存する聖徳太子に関する伝記の中では最も古いものとされていますが、その作者や成立年代については詳細が分かっていません。この文書は全一巻から成り、家永三郎の分類によれば、五つの部分に分かれています。主に仏教的な事績が記録されているものの、後述するように日本書紀とは異なる点も見受けられます。

概要

原本は現在残っていないものの、写本は江戸時代末期まで法隆寺に保管されており、非常に珍しい「孤本」とされています。現在その写本は知恩院に移され、国宝として認識されています。この写本の巻末には、所有者と思われる高僧の名前が残されています。これは法隆寺に関連する高僧であり、内容の多くは弘仁年間（810年-824年）以降、延喜17年（917年）以前に成立したと考えられています。また、永承5年（1050年）までには現在の形に整えられたと見られています。

これまでこの文献はあまり知られていませんでしたが、近代史学の発展とともに、官製の『古事記』や『日本書紀』に対する文献批判が進み、本書の内容が記紀以前の貴重な史料であるとされるようになりました。このため、現在では歴史的に信頼性の高い古典文献として評価されています。

章立て

この作品は五つの部分から構成されています。

第一部

第一部では厩戸豊聰耳聖徳法王の系図が詳細に記述されています。特に妻や娘の名前も含まれており、これは後の系図が父子関係のみを記述しているのと対照的です。

第二部

第二部では聖徳太子の事績が記載されています。ここでは仏教に関する業績だけでなく、冠位十二階の制度についても詳しく述べられています。

第三部

法隆寺に関連する貴重な文書が含まれており、特に天寿国曼荼羅繻帳の銘文は、現存する文献が断片的であるため、その記録が非常に貴重です。

第四部

歴史的な出来事や出来事が箇条書きの形でまとめられており、十七条憲法や蘇我入鹿事件の年、百済からの仏教公伝などが挙げられています。

第五部

最后の部分では欽明天皇から推古天皇までの治世の年数や崩御の年月、陵の場所が記されています。この中には欽明天皇の即位年に関する日本書紀との相違点があり、このテーマは学者たちの間で論争を引き起こしています。推算された即位年は531年であり、日本書紀による即位年（539年）との不整合が指摘されています。これに関しては南北朝のように異なる朝廷が並立していたとする説や、単に暦法に起因する誤解の可能性があると論じられています。

このように、『上宮聖徳法王帝説』は日本の古代史を理解する上での重要な文献であり、聖徳太子を囲む多様な事績や日本の歴史を知る手がかりとして、今後もさらなる研究が望まれます。

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