上海航空機製造

上海航空機製造

上海航空機製造厂（Shanghai Aircraft Manufacturing Factory、略称：SAMF）は、中華人民共和国の航空機製造を担う主要企業の一つです。中国最大の都市である上海市に拠点を置いています。

概要と沿革

この企業は、1950年に中華人民共和国の建国初期の国営企業として設立されました。当初は、国内の航空需要に応えるための基盤整備を目的としていました。その後の中国経済の改革開放政策と資本主義化の進展に伴い、組織形態は変化しましたが、現在では中国の主要な航空宇宙・防衛関連企業グループである中国航空工業グループ（AVIC）の傘下企業として位置づけられています。SAMFは、中国政府が推進する国産ジェット旅客機開発政策において、重要な役割を担ってきました。

主要なプロジェクトと協力関係

SAMFの歴史において特筆すべきは、国産大型ジェット旅客機開発への初期の挑戦です。中国は独自技術による旅客機開発を目指し、1970年代には西側諸国の技術、特にボーイング707旅客機を参考に、Y-10（運-10）の開発プロジェクトを進めました。SAMFはこのプロジェクトの中心的な役割を果たしましたが、技術的課題や経済的な理由から、残念ながらこの計画は商業的な成功に至る前に中断されました。

Y-10プロジェクトの経験を経て、SAMFは海外の主要な航空機メーカーとの協力関係を深める方向に転換しました。1980年代には、アメリカ合衆国の航空機メーカーであったマクドネル・ダグラス社と提携し、同社のベストセラー機であるMD-80シリーズの生産に関わりました。具体的には、MD-82型機およびMD-83型機のノックダウン生産（主要部品の供給を受け、最終組み立てを行う方式）を合計35機実施しました。さらに、後継機であるMD-90型機については、より高度な技術移転を含むライセンス生産を2機手がけました。これらの経験は、SAMFが現代的な航空機製造技術を習得する上で貴重な機会となりました。

また、SAMFは国際的な航空機産業のサプライチェーンにも参加しています。世界的な航空機メーカーであるボーイング社の下請けとして、737型機などの主要構造部品の製造を請け負っており、特に水平尾翼などの製造実績があります。これは、SAMFの製造能力と品質が国際的な基準を満たしていることを示すものです。

現在の事業と将来展望

航空機本体の製造や部品供給に加え、SAMFは航空機の整備・保守サービスも提供しており、中国国内の航空運航を支える重要なインフラの一部を担っています。

現在、SAMFが重点的に取り組んでいるプロジェクトの一つに、中国が独自に開発を進めている地域間輸送機ARJ21「翔鳳（Xiāngfèng）」の開発があります。ARJ21は、中国国内の地方路線や短距離国際線市場をターゲットとした小型ジェット旅客機であり、SAMFはこの機の開発・製造において中心的な役割を担っています。ARJ21の開発は、中国が将来的に大型旅客機市場にも参入していくための技術的基盤を築く上で、非常に重要なステップと位置づけられています。

上海航空機製造は、過去の国産化への挑戦、海外企業との提携による技術習得、そして現在のARJ21開発といった取り組みを通じて、中国の航空機産業の発展において歴史的かつ現在進行形の重要な役割を果たしています。将来的に、中国が世界の航空機市場でさらに存在感を増していく中で、SAMFの果たす役割は一層大きくなることが予想されます。

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