上海蔚来汽車

NIO（蔚来汽車）: 中国EV市場を牽引する革新企業

NIO（蔚来汽車、英語名:NIO Inc.）は、中国を代表する電気自動車（EV）メーカーです。2014年に設立された新興企業ながら、独自のバッテリー交換システムや洗練されたデザインで、中国EV市場におけるトップランナーとして躍進を遂げています。日本ではニーオまたはニオの名称で知られています。

急成長と経営課題

NIOは創業以来、EV開発に特化。量産は江淮汽車に委託し、中国における新興EVメーカー「御三家」の一角を占めます。中国版テスラとも評され、2010年代後半は目覚ましい成長を遂げましたが、2020年代前半は厳しい経営状況が続きました。2022年は販売台数が前年比34%増の12万2486台、売上高も前年比36.3%増の492億686万元を記録するも、純損益は145億594万元の赤字でした。

2023年の販売目標は25万台（前年比2倍）と意欲的でしたが、第2四半期には純損失が前年同期比約28%増の61億元に増加。コスト削減のため、同年11月には従業員約2万7000人のうち10%の人員削減を実施しました。

沿革とグローバル展開

NIOの歴史は、2014年11月、中国の自動車情報サイト「易車」創設者である李斌氏によって安徽省合肥市に「NextEV」として設立されたことに始まります。2016年にはNIOブランドが立ち上げられ、高性能EV「EP9」を発表。同車は2018年、ニュルブルクリンク北コースで当時の市販EV最速ラップタイムとなる6分45秒25を記録しました。

2018年9月にはニューヨーク証券取引所に上場。2022年には香港証券取引所にも上場し、グローバルな資本市場へのアクセスを強化しました。2021年にはノルウェーへの進出を果たし、ES8の輸出を開始。その後も、ドイツにイノベーションセンターを設立するなど、欧州市場への積極的な展開を図っています。バッテリー交換ステーションの海外展開も進めており、ハンガリーにも工場が建設されています。さらに、スマートフォン事業への進出も発表しており、事業の多角化を進めています。リチウム資源の確保にも注力しており、オーストラリアやアルゼンチンとの提携も発表しています。

バッテリー交換システム：NIOの強みと課題

NIOの最大の特徴は、バッテリー交換システム（BaaS: Battery as a Service）です。専用の交換所でバッテリーを交換することで、充電時間を大幅に短縮。交換時間はわずか5分以内であり、充電インフラ整備の遅れといった課題を克服する画期的なシステムです。このシステムは、車両価格を抑える効果も生み出しており、バッテリー代をサブスクリプションとして別途支払うことで、車両本体価格を抑えることができます。しかしながら、交換ステーションの建設コストは充電ステーションの倍以上とされており、バッテリー在庫管理コストも課題となっています。また、このシステムは過去に他の企業が試みて失敗している実績もあります。

モデルラインナップと事故

NIOは、クーペのEP9から始まり、SUVのES8、ES6、EC6、セダンのET7、ET5、ET9など、多様なモデルを展開しています。しかしながら、2021年には、同社の運転支援システムを稼働中に発生した事故で死亡者が出たことが大きな話題となり、自動運転技術の安全性に関する議論を巻き起こしました。

結論

NIOは、革新的なバッテリー交換システムとスタイリッシュなデザインで中国EV市場を席巻しつつありますが、経営課題や競争の激化など、克服すべき課題も残されています。今後の成長戦略と技術開発の進展に注目が集まっています。小鵬汽車や理想汽車といったライバル企業との競争、テスラやBYDなどのグローバル企業との競争にも勝ち残る必要があるでしょう。

もう一度検索