上海音楽学院

上海音楽学院

上海音楽学院（Shanghai Conservatory of Music）は、中華人民共和国最大の都市である上海市に位置する、長い歴史と伝統を持つ国立の音楽大学です。1927年に創設され、同年に高等教育機関としての地位を得ました。この設立は、中国国内における音楽専門の高等教育機関としては初の試みであり、その後の中国の音楽教育、ひいては音楽文化全体の発展に多大な影響を与える画期的な出来事でした。

沿革

上海音楽学院の源流は、1927年11月27日に著名な教育者である蔡元培と音楽家の蕭友梅という二人の先駆者によって設立された「国立音楽院」に遡ります。これは、西洋の音楽教育システムを導入し、専門的な音楽家を育成することを目的とした、中国で初めての音楽専門の高等教育機関でした。

創設以来、本学は中国を取り巻く激動の時代の変遷とともに、その組織や名称を何度か変更しています。

1927年11月: 「国立音楽院」として第一歩を踏み出しました。
1929年9月: 「国立音楽専科学校」と改称され、専門教育機関としての性格をより明確にしました。
1941年: 戦時下の情勢の中で、「国立上海音楽院」となりました。
1945年: 戦争終結後、「国立上海音楽専科学校」へと名称が戻されました。
1950年: 中華人民共和国成立後、高等教育機関の再編に伴い、「中央音楽学院華東分院」として新たな位置づけがなされました。
1956年: 現在の名称である「上海音楽学院」となり、今日に至るまでこの名称が使われています。

これらの名称変更は、それぞれの時代の社会情勢や教育制度の変化を反映しており、本学が中国の近現代史とともに歩んできた軌跡を示しています。

組織と教育

現在の上海音楽学院は、音楽に関する幅広い専門分野を網羅するために、11の学科で構成されています。作曲、指揮、声楽、器楽（ピアノ、弦楽器、管楽器、打楽器など）、音楽学、音楽教育、音楽療法、録音芸術、民族音楽など、多岐にわたる分野において高度な専門教育と研究が行われています。国内外から集まる学生たちは、優れた教授陣の指導のもと、理論と実践の両面から深く音楽を探求しています。

主な教員

本学には、中国国内外の音楽界を牽引する多くの著名な音楽家や学者が教員として在籍し、後進の指導にあたっています。現在の校長は、国際的に活躍するバリトン歌手としても知られる寥昌永氏です。また、本学の歴史において特筆すべき人物として、1949年から1984年という長期間にわたり校長を務め、その発展に多大な貢献をした賀緑汀氏が挙げられます。その他にも、中国を代表する作曲家である桑桐氏や楊立青氏、現代音楽の分野で重要な役割を果たしている許舒亜氏、林在勇氏などが教鞭を執ってきました。また、日本を代表するシンガーソングライターである谷村新司氏も、教員として本学に関わった経験があります。

上海音楽学院は、中国初の音楽専門高等教育機関として設立されたその歴史と伝統を受け継ぎながら、常に時代のニーズに応じた教育を展開し、多くの優れた音楽家や音楽研究者を輩出してきました。今日では、中国国内だけでなく、アジア太平洋地域、さらには世界において、音楽教育と研究の中心的な役割を担う機関の一つとして国際的な評価を得ています。活発な国際交流を通じて、世界の音楽教育機関との連携を深め、グローバルな視点を持った人材育成を目指しています。その教育理念と実績は、中国の現代音楽史において不可欠な存在であり続けています。

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