上田徹一郎

上田徹一郎の業績と影響

上田徹一郎（うえだ てついちろう、1930年8月21日 - 2013年4月17日）は、日本の民事訴訟法を専門とする著名な法学者であり、関西学院大学の名誉教授です。彼はその広範な知識と研究を通じて、日本における法学の発展に寄与しました。

学問的背景と主な業績

上田は、1986年に法学博士号を取得し、その学位論文「判決効の範囲 -範囲決定の構造と構成-」では、民事訴訟における判決の効力や既判力の問題に深く切り込んでいます。この研究は、彼の法的視点を確立する上での重要な一歩となり、その後の彼の多くの業績に影響を与えることとなります。

彼の著作『民事訴訟法』は特筆すべきもので、判例に基づく体系的な理解を提供し、司法試験の受験生や法律実務家からは高く評価されています。この教科書は、旧訴訟物理論に基づく数少ないものの一つとして、民事訴訟法の理解を深める重要な資料となっています。

学説と実務への寄与

上田の研究は特に「形成権」に関する理論に焦点を当てており、以前の裁判で形成権を行使していなかった場合の遮断効の扱いや、その原則についての対立見解も掘り下げています。彼は、この対立を単なる形式的な問題としてではなく、実体的な利害情況に根ざすものとして分析し、より実践的で現実的な解決策を提示しました。特に上田の提出責任説は、法的立場の明確化を図るものとして高く評価されています。

また、上田は訴訟物の扱いに関連する理論の発展にも貢献し、新旧の訴訟物理論間の対立を相対化する見解を提示しました。彼は、実務における解釈や運用の持つ重要性を強調し、理論だけでなく実務にも有益な示唆を与える学説を展開しました。これにより、上田の学説は、法律実務家の信用を得る結果となりました。

人物と私生活

上田の息子、上田誠一郎もまた著名な民法学者として知られており、父の影響を受けつつ大学で教鞭を執っています。上田自身はクラシック音楽を愛し、多くの作品を鑑賞する趣味を持っていました。自宅には音楽鑑賞専用の部屋を設けるほどの情熱を注いでいました。

略歴の要点

• - 1949年に灘高等学校を卒業
• - 1953年に神戸大学法学部を卒業し、1958年から関西学院大学法学部の専任講師を務める。
• - その後、助教授、教授と昇進し、最終的には名誉教授として学問の発展に寄与。
• - 1990年から兵庫県収用委員会の会長や旧司法試験の考査委員を務め、幅広い活動を行ってきた。

結論

上田徹一郎は、日本の民事訴訟法の発展において欠かせない存在であり、彼の学説や著作は今なお多くの法律家や学生に影響を与え続けています。その深い知見と実務に基づくバランスの取れたアプローチは、これからの法学研究においても多くの指針を提供することでしょう。彼の遺産は、法的思考の深化に寄与し、今後も私たちに影響を与え続けることでしょう。

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