上田惇生

上田 惇生（うえだ あつお）

1938年11月9日に生まれ、2019年1月10日に逝去した日本の経営学者です。ものつくり大学名誉教授や立命館大学客員教授、さらにはドラッカー学会の代表を務めるなど、多方面で活躍しました。特に、経営思想家であるピーター・ドラッカーとの特別な関係性で知られ、ドラッカー本人から「もっとも親しい友人」「日本での分身」と称されるほどでした。

経歴

上田惇生氏は埼玉県に生まれ育ちました。埼玉県立浦和高等学校を卒業後、1964年に慶應義塾大学経済学部で学びを終えました。社会人としてのキャリアは、経済団体連合会（経団連）でスタートさせ、会長秘書、国際経済部次長、広報部長などを歴任しました。この経験は、後の経営学の研究や教育に生かされたと考えられます。

その後、ものつくり大学に移り、マネジメントや社会論の教授として教鞭をとりました。同大学では長年教育・研究に貢献し、名誉教授の称号を得ています。また、立命館大学でも客員教授として教壇に立ち、教育活動を続けました。

ドラッカー思想の普及

上田氏の生涯における最大の功績の一つは、ピーター・ドラッカーの経営思想を日本に深く根付かせ、その普及に努めた点にあります。ドラッカー本人との親密な交流を通じて、その思想の本質を理解し、日本の文化やビジネス環境に合わせた形で紹介しました。

ドラッカー学会の代表として、研究者や実務家が集まる場を牽引し、ドラッカー思想のさらなる研究・発展に貢献しました。こうした長年の普及活動が評価され、2001年にはリスクマネジメント協会より「ベスト・リスクマネジャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。

また、経営学の分野以外でも、渋沢栄一賞の選考委員や、埼玉ちゃれんじ企業経営者選考委員会の代表を務めるなど、社会的な役割も果たしました。

主な著作、翻訳、監修

上田氏は、自らドラッカー思想に関する解説書を執筆するだけでなく、ドラッカーの原著の翻訳や編集にも深く関わりました。これにより、日本の読者がドラッカーの膨大な著作に直接触れる機会を飛躍的に増加させました。

主な著書には、『入門ドラッカー 万人のための帝王学を求めて』（2006年）、『ドラッカー入門 新版 未来を見通す力を手にするために』（井坂康志共著、2014年）、『ドラッカー 時代を超える言葉 洞察力を鍛える160の英知』（2009年）、『P.F.ドラッカー 完全ブックガイド』（2014年）などがあります。

翻訳・編集に携わったドラッカーの代表的な著作は多数に上ります。例えば、『プロフェッショナルの条件』、「はじめて読むドラッカー・シリーズ」四部作、「ドラッカー名言集」四部作、『エッセンシャル版マネジメント』、『現代の経営』、『経営者の条件』、『断絶の時代』、『イノベーションと企業家精神』、『非営利組織の経営』（1991年、新訳2007年）、『ネクスト・ソサエティ』、『プロフェッショナルの原点』など、枚挙にいとまがありません。

さらに、佐藤等氏編著の『実践するドラッカー』シリーズ（【思考編】、【行動編】、【チーム編】、【事業編】、利益とは何か）では監修を務め、ドラッカー理論の実践的な適用方法を示すことにも力を入れました。

著作や翻訳活動に加え、CD教材『60分でわかるドラッカー』のリリースや、オンライン媒体であるダイヤモンド・オンラインでの連載「経営学の巨人の金言・至言－3分間ドラッカー」を通じて、幅広い層へのドラッカー思想の啓蒙活動を続けました。

上田惇生氏は、ピーター・ドラッカー本人との緊密な絆を背景に、その卓越した経営思想を日本に紹介し、普及・研究の礎を築いた第一人者として、日本の経営学史において極めて重要な位置を占めています。その活動は、多くの経営者や研究者に今なお影響を与え続けています。

もう一度検索