上田泰己

上田泰己

上田泰己（うえだ ひろき）は、1975年生まれの日本の生命科学者です。東京大学大学院医学系研究科教授、理化学研究所生命機能科学研究センター合成生物学研究チームチームリーダーとして、システム生物学・合成生物学を専門とし、生命の時間・空間・情報の解明に取り組んでいます。

人物・経歴

福岡県に生まれた上田氏は、2000年に東京大学医学部を卒業、2004年に同大学院医学系研究科を修了しました。2003年より理化学研究所にて研究チームを率い、2013年からは東京大学大学院医学系研究科教授を務めています。現在は、理化学研究所、東京大学大学院情報理工学研究科、東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構、大阪大学などで要職を兼務し、多岐にわたる研究活動を展開しています。

上田氏は、「細胞を創る」研究会の会長や、JSTさきがけ研究領域総括、時間生物学会大会長、日本学術会議若手アカデミー代表なども歴任しました。

その功績は数々の賞にも表れており、日本イノベーター大賞、文部科学大臣賞若手科学者賞、日本IBM科学賞、山崎貞一賞、市村学術賞などを受賞しています。

研究内容

上田氏の研究は、体内時計などの哺乳類の概日時計と睡眠・覚醒リズムの解明を中心に、システム生物学的なアプローチを用いて時間生物学を展開しています。

概日時計の分子機構解明: 哺乳類概日時計の転写回路を特定し、遅延フィードバック構造が複数含まれることを明らかにしました。
概日時計のシンギュラリティ現象解明: 概日時計が光によって止まる現象が、複数の概日時計細胞のずれによって生じることを発見しました。
概日時計の温度補償性解明: 概日周期が温度に依存しない理由として、温度に依存しないリン酵素反応が関与していることを解明しました。
睡眠研究: カルシウムやCaMKIIα/βがノンレム睡眠の制御に重要であることを発見し、睡眠のリン酸化仮説を提唱しました。また、M1およびM3ムスカリン受容体がレム睡眠の制御に必須であることを明らかにしました。

これらの研究過程で生まれた分子時刻法やCUBIC法は、臓器や全身を透明化し全細胞解析を可能にする技術であり、世界中の研究者に活用されています。また、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9を用いたTriple-CRISPR法、ESマウス法、SSS法を確立し、ノックアウトマウスやノックインマウスを交配なしに作成する次世代遺伝学の概念を具現化しました。

略歴

1975年: 福岡県福岡市生まれ
1991年: 福岡市立香椎第１中学校卒業
1994年: 久留米大学附設高等学校卒業
2000年: 東京大学医学部医学科卒業
2004年: 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了、博士（医学）
2003-2010年: 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター システムバイオロジー研究チーム チームリーダー
2011-2018年: 理化学研究所 生命システム研究センター 細胞デザインコア コア長 合成生物学研究グループ グループディレクター
2018年-現在: 理化学研究所 生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム チームリーダー
2013年-現在: 東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室 教授

受賞歴

2004年: 日本イノベーター大賞・優秀賞
2005年: 東京テクノフォーラム21・ゴールドメダル
2006年: 文部科学大臣賞 若手科学者賞
2009年: 日本IBM科学賞
2011年: 日本学術振興会賞
2012年: 塚原仲晃記念賞
2015年: 第15回山崎貞一賞
2017年: 第4回イノベーター・オブ・ザ・イヤー
2018年: 第50回市村学術賞功績賞

著作

学位論文: Systems biology on circadian rhythm（概日リズムのシステム生物学）
共著・編著: 時計遺伝子の正体 (NHKサイエンスZERO)、細胞を創る・生命システムを創る、生物のなかの時間、体内時計はいま何時?、脳は眠りで大進化する

メディア出演

爆笑問題のニッポンの教養
情熱大陸
プロフェッショナル 仕事の流儀
ツナガルカガク
又吉直樹のヘウレーカ!

外部リンク

Hiroki R. Ueda (@hiroking1975) - X（旧Twitter）
上田泰己 - KAKEN 科学研究費助成事業データベース
合成生物学研究グループ - 東京大学大学院医学系研究科
* Laboratory for Systems Biology - 理化学研究所の研究室サイト

もう一度検索