上田温泉電軌デロ300形電気機関車

上田温泉電軌デロ300形電気機関車の歴史

上田温泉電軌デロ300形電気機関車は、1928年に上田温泉電軌（後に上田交通、現在は上田電鉄）によって製造された電気機関車です。この機関車は、同社の北東線（後の真田傍陽線）の貨物輸送の開始に伴い、川崎造船所で新たに作られました。

車両は自重が40トンで、動軸を4軸持つ「D形電機」として設計されており、1928年2月28日には製造番号No.25のデロ300形301が完成しました。この機関車は、前後にボンネットを持ついわゆる凸形車体が特徴で、他の凸型電気機関車に比べてボンネットの張り出し部分が小さく、箱型に近い形状をしています。これは当時の40トン級電気機関車における標準的な設計形式であり、同じ設計のものに小田急電鉄や西武鉄道の車両が存在しました。

技術仕様

デロ300形は電空単位スイッチ形式の間接非自動制御を採用しており、主電動機には川崎造船所製のK7-1503-C型を4基搭載しています。これにより、定格出力は111.9kW、定格速度は時速24km、最大牽引力は6,640kgfに達します。また、勾配のある北東線での運用を考慮して、発電ブレーキも装備されています。

運用開始

北東線は1927年11月20日に旅客運輸を開始したものの、貨物輸送は1928年1月に上田 - 伊勢山間で始まります。そして、デロ300形はその約2ヵ月後に出発し、貨物列車への運用が予定されました。しかし、デロ300形はその出力と自重から見て、北東線の貨物輸送のニーズには過剰であったため、運用期間は限られ、1940年には廃車となりました。

廃車後、その車両は名古屋鉄道に譲渡され、デキ500形501と名を改めました。名鉄では最も強力な機関車となりましたが、その設計の違いから乗務員には不評がありました。特にデキ500形は二種類の制動弁を持っていたため、その操作に戸惑ったとされています。

岳南鉄道への移籍

1969年、岳南鉄道は6,000Vから1,500Vの架線電圧に昇圧することに決定し、古い動力車の代わりとしてデロ300形を名古屋鉄道から借り受けました。翌1970年には正式に譲渡を受け、ED50形ED501と改称されました。この際、車体の表記は名鉄在籍時のままに保たれ、名鉄独特のローマン字体も維持されました。

岳南鉄道では、ED501は主に貨物列車の入換作業に活用され、日本大昭和板紙吉永工場と岳南原田駅間での運用が中心でした。しかし、2013年には鉄道事業の移管に伴い岳南電車に引き継がれ、2015年に廃車されました。

2021年8月21日には、「がくてつ機関車ひろば」での展示が計画されています。

まとめ

歴史的な価値を持つ上田温泉電軌デロ300形は、様々な鉄道会社での運用を経て、その存在を人々に伝えてきました。今後は展示を通じて、その歴史と魅力を多くの人々に伝えていくことが期待されています。

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