上田秀明

上田秀明：波瀾万丈の外交官人生

上田秀明氏は1944年新潟県生まれ。東京大学卒業後、外務省に入省し、ソ連（現ロシア）やアメリカなどを中心に外交官としてのキャリアを歩みました。外務省ロシア語研修グループ「ロシアン・スクール」出身で、ロシア語に堪能な上田氏は、在ソ連大使館での勤務経験や欧亜局東欧課長などを歴任しました。

そのキャリアの中で、1995年のAPEC大阪会議準備事務局長を務めた経験は特筆に値します。日本初開催ということもあり、大規模な国際会議の準備は多くの困難を伴ったはずです。しかし、この会議において、会場費の水増し請求という不祥事が発覚。上田氏は計算の困難さを主張するも、上司としての監督責任を問われ、厳重訓戒処分を受け、給与の一部返納と費用弁済を行いました。

APECでの経験の後、上田氏はポーランドとオーストラリアで特命全権大使を務めました。これらの経験は、その後の人権人道担当大使への就任に繋がる重要な礎となったでしょう。2008年、第1次安倍内閣が拉致問題や慰安婦問題への対応強化を図る中で、新たに設置された人権人道担当大使に就任します。国際社会協力部長時代の経験を買われ、国際社会における人権問題への取り組みを担うこととなりました。

しかし、上田氏の人権人道担当大使としての在任期間は、様々な批判や議論を巻き起こしました。福井県立大学の島田洋一教授は、上田氏の人権問題に関する情報発信力の不足を指摘し、その適性を疑問視しました。

そして、2013年、スイス・ジュネーヴで開催された国連拷問禁止委員会での出来事が、大きな波紋を呼びました。委員会の席上で、上田氏はモーリシャスのドマー委員の発言に対して、英語で「シャラップ（Shut up!）」と発言。この発言は国際的な場で日本の外交官が用いる言葉としては不適切であると批判されました。「シャラップ」発言は、日本のイメージを損なう可能性があり、上田氏の辞任を求める声も上がりました。上田氏の英語力の不足も指摘されており、その発言は多くの誤りを含んでいました。

この事件後、上田氏は人権人道担当大使および外務省参与を辞任しました。外務省は辞任理由について、上田氏からの辞職願によるものだと説明しました。しかし、国連拷問禁止委員会での発言が辞任に影響を与えた可能性は否めません。

上田氏の外交官としてのキャリアは、成功と失敗、そして多くの議論を巻き起こす出来事を含むものでした。APEC大阪会議での不祥事、そして国連拷問禁止委員会での「シャラップ」発言は、国際舞台で活躍する外交官にとって、高い倫理観とコミュニケーション能力がいかに重要であるかを示す出来事と言えるでしょう。

上田氏は、APEC大阪会議の準備、ポーランドとオーストラリアでの大使経験、人権人道担当大使としての活動など、国際社会との関わりの中で様々な課題に取り組んできました。彼の経験は、日本の外交政策や国際協力のあり方について、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

また、上田氏は『極東共和国の興亡』などの著作や論文を発表しており、学術的な活動にも積極的に取り組んでいます。京都産業大学客員教授として、後進の育成にも貢献しています。

上田秀明氏の外交官人生は、成功と失敗、そして多くの議論を巻き起こす出来事を通して、日本の国際社会における立ち位置や外交官の役割について深く考えさせるものです。彼の経験は、日本の外交史における重要な一ページとして、今後も議論されることになるでしょう。

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