上田竹翁

上田竹翁の生涯と業績

概要

上田竹翁（うえだ ちくおう、1866年 - 1941年）は、日本の文人・写真研究家で、その本名は上田寅之助です。彼の主な業績には、和英辞書の編纂や、写真技術に関する書籍の執筆が含まれます。明治から昭和にかけての時代に活躍し、文学や芸術の発展に貢献しました。

家族背景

竹翁は船場で生まれ育ち、父は上田文斎という儒医でした。家族は十三代にわたって大阪で医療や教育に従事しており、またさまざまな藩主との関係もあったと言われています。兄弟の中には、商業を成功させた人物や、出版界での地位を築いた者もいました。特に、青木嵩山堂を興した青木恒三郎は、著名な文人や作品を多く出版しました。

経歴と業績

竹翁は、13歳から鴻池家の別家を受け継ぎ、箸尾寅之助と名乗りました。1887年に和英辞書『新訳和英辞書』を編纂し、文語を解するための新しい訳語を選定したことで、初の本格的な和英辞書として評価されました。この辞書には従来の辞書には含まれていなかった2300以上の新項目が収録されました。

その後は「竹屋」という洋雑貨商を営む傍ら、1893年にアコーディオンに関する書物『手風琴独案内』を著し、大ヒットとなったことで文人としての名声を確立しました。彼はこの書で西洋音階を巧みに取り入れ、伝統的な東洋音楽も楽譜化しました。

さらに、同年には釣りや狩猟に関する書籍を編集し、民俗学的な視点を取り入れた内容が特徴でした。また、日本の遊戯文化に関する書籍『新撰雙陸独稽古』を出版し、1898年には煎茶道についての著書も手がけました。これにより、伝統文化の保存や普及に尽力しました。

写真研究家としての活躍

1903年には「上田写真機店」に加わり、写真技術に関する書籍を多数執筆しました。特に1910年には、写真修正技術に関する技法を初めて日本で紹介したことで、彼の名は写真家の間で広まりました。1920年に発表した『冩眞術百科大辞典』は、彼の知識と技術をまとめた集大成となり、写真術研究者としての地位を確立しました。

竹翁の関心は芸術写真に向かい、1921年には「藝術冩眞社」を設立し、雑誌『藝術冩眞』を刊行しました。彼は新しい写真理論を積極的に紹介し、多くの写真家を発掘しました。この活動は、日本の写真界に大きな影響を及ぼしました。彼はまた、写真技術を向上させるために様々な教育プログラムを提供し、日本冩眞学院の講師も務めました。

晩年

竹翁は後年、映画技術の発展を受けて、家庭活動写真術を普及させるための著書を発表し、映画を教育や家庭生活に活用しようという試みを行いました。また、彼のピクチュア・ライブラリー事業の構想は、映画の鑑賞体験をより多くの人々に届けるためのユニークなアイデアでした。彼は生涯にわたって文人としての道を歩み続け、教育や文化の発展に寄与しました。

上田竹翁は、さまざまな分野で功績を残し、日本の文化や芸術に多大な影響を与えた人物として、今もなお語り継がれています。その業績は、文人としての品位と技術の深化を同時に追求したものであり、彼の名は歴史に刻まれています。

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