上覧相撲

上覧相撲（じょうらんずもう）

上覧相撲は、将軍が観戦する形式の大相撲を指します。この相撲は、単なる興行ではなく、歴史的には武士たちの技芸を披露する場であり、特に重要な意味を持ちます。広義では、鎌倉時代や室町時代にもこの形式の相撲が行われており、武士たちは主君である将軍の前で技を競い合いました。戦国大名も相撲大会を頻繁に開催し、優れた力士を家臣として取り立てることもありました。

鎌倉時代においては、『吾妻鏡』に記載された「相撲奉行」という役職が存在し、これは上覧相撲の進行や事務監督を行うためのものでした。ただし、この奉行は勝負を裁く役割ではありませんでした。その後、狭い意味での上覧相撲は、江戸時代の11代将軍徳川家斉や12代将軍徳川家慶の時代に行われました。これらは江戸城の吹上で計7回催されたもので、力士たちは自らの主君から「上様の覚えめでたき」を得ることが重要視され、場合によっては力士を解雇される可能性もありました。

そのため、上覧相撲は非常に真剣勝負の場となり、通常の本場所とは異なる緊張感が支配していました。結果として、上覧においては預かりや無勝負のルールが適用されないこともあり、力士たちは全力を尽くして闘うことが求められました。

幕府側の意図としては、上覧相撲が「寛政の改革」により娯楽が制限されていた庶民の不満を和らげる一方で、江戸相撲の地位を確立する絶好の機会とすることがありました。このように、上覧相撲は将軍の意向に応じた重要なイベントであり、その背景には歴史的な文脈が色濃く影響しています。

上覧相撲の歴史

上覧相撲はその発展の中で多くの意味を持っていました。例えば、寛政3年の初回の上覧相撲では、江戸相撲が大坂相撲や京都相撲に対抗意識を持ち、興行の立て直しを図る要素もありました。この時期、横綱制度も上覧と結びつけられ、相撲の権威づけがなされる契機となりました。

上覧相撲の記録の中には、武士たちの技を目にするための特別な機会としての側面も見受けられます。特に、寛政3年6月11日の上覧相撲では、谷風と小野川が横綱の土俵入りを披露し、その後、雷電が公式戦で初の黒星を喫しました。また、この時、小野川が「待った」をかけた際、行司がその判断を下す過程も伝説になっています。

後の上覧相撲でも、文政6年や文政13年など、横綱土俵入りが行われるなど、力士たちが特別な場でのパフォーマンスを披露しました。特に、文政13年の際には、将軍が稲妻の勝敗について問いただすエピソードが語られています。

上覧相撲は、単なるスポーツイベントにとどまらず、社会的な影響力を持つ芸術・文化の一部でもありました。その意義は、相撲が日本の歴史においてどのように位置付けられてきたかを理解する手助けとなるでしょう。

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