上郷猿田遺跡

上郷猿田遺跡

上郷猿田遺跡（かみごうさるたいせき）は、神奈川県横浜市栄区上郷町に位置する複合遺跡です。縄文時代から奈良時代・平安時代初めにかけての集落跡であり、多様な遺構や遺物が発見されています。

概要

1982年に行われた発掘調査は、神奈川県立上郷高等学校（当時）の建設に先立って実施されました。遺跡は丘陵地に立地しており、調査の結果、奈良時代から平安時代のものとみられる竪穴建物13棟、掘立柱建物1棟が確認されました。

特筆すべきは、掘立柱建物です。東西5間×南北3間という規模の大きさから、当時の重要な施設であった可能性が考えられます。ただし、発掘当初は建物の認識がされておらず、報告書では「方形配列小竪穴遺構」として記録され、縄文時代の柱跡とされていました。

1号竪穴建物からは、須恵器の「耳付き短頸壺」が出土しました。この壺は、その名の通り「耳」と呼ばれる突起が付いているのが特徴で、報告書では骨蔵器（骨壺）として扱われています。当時としては高級品であり、神奈川県内でも稀な出土例として注目されています。

遺跡の近隣には、瀬上沢を挟んだ丘陵に上郷深田遺跡という製鉄遺跡が存在します。立地条件や巨大な掘立柱建物の存在などを考慮すると、上郷猿田遺跡は、深田遺跡で働く人々が生活していた集落であった可能性も指摘されています。

奈良時代の集落の下からは、縄文時代後期（堀之内式期）の集落跡も発見されており、竪穴建物2棟が確認されています。また、栄区公田町の公田ジョウロ塚遺跡からは、日本最大級とされる人面把手が出土していますが、上郷猿田遺跡からも小型の人面把手が出土しており、当時の文化交流をうかがわせます。

発掘報告書

横浜市上郷猿田遺跡調査団『上郷猿田遺跡』（神奈川県横浜市上郷猿田遺跡調査報告書）1983年（昭和58年）3月

参考文献

栄の歴史編集委員会『栄の歴史』栄区地域振興課 2013年（平成25年）3月

関連項目

瀬上沢
上郷深田遺跡
* 上郷高等学校

もう一度検索