上野セントラル

かつて東京都台東区の上野エリアに存在し、長年にわたり映画ファンに愛された映画館が「上野セントラル」です。上野公園のほど近くにあった商業施設「上野松竹デパート」の中に位置し、1953年の開業から2006年の閉館まで、53年間の歴史を刻みました。

沿革

上野セントラルの始まりは、1953年 11月に上野松竹デパートの2階に開館した「上野松竹映画劇場」でした。松竹系の封切作品を上映する劇場として営業を開始した後、地下1階に「上野映画劇場」と「上野名画座」を、さらに2階の上野松竹映画劇場の隣にはミニシアターとして「上野セントラル」を次々と増設し、複数のスクリーンを持つ映画館へと発展していきました。作家・編集者でありAV監督としても活動する東良美季氏は、学生時代にこの映画館でアルバイトを経験しており、その時の思い出を自身のブログで語っています。

施設の改編も行われました。1998年 8月1日には、それまで別名称だった上野映画劇場、上野名画座、ミニシアターの上野セントラルを「上野セントラル1・2・3」として統一し、リニューアルオープンしました。しかし、松竹のブロック・ブッキング制が1999年に廃止されたことに伴い、同年6月12日にはさらなる名称変更が行われます。最初から存在した上野松竹映画劇場が「上野セントラル1」となり、従来のセントラル1・2・3はそれぞれ「セントラル2・3・4」へと改称され、最終的に4つのスクリーン構成となりました。

上映作品の傾向も時代とともに変化しました。初期の上野松竹映画劇場は松竹作品の封切館でしたが、増設されたスクリーンでは多様なジャンルの作品が上映されました。例えば、近隣の上野日活館が閉鎖した後は、セントラル2（旧上野映画劇場）が日活の封切館となり、特に日活ロマンポルノ作品が数多く上映されました。セントラル3（旧上野名画座）は東活系のピンク映画を中心に上映するなど、成人映画の上映も特徴の一つでした。改称後のセントラル2・3、そして後から加わったセントラル4では、やや特徴のある洋画や邦画、ムーブオーバー作品などが上映されるようになり、末期にはロードショー作品を扱う劇場へと変化していきました。また、2003年8月末に上野にあった東宝系の主要劇場である上野東宝劇場と上野宝塚劇場が閉館してからは、東宝配給の邦画や洋画の大作・話題作も目立つようになりました。セントラル1では、『ハリー・ポッター』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズといった大型の洋画作品が上映された時期もありました。

閉館

2000年代に入ると、上野セントラルを取り巻く環境は厳しさを増していきます。錦糸町の楽天地シネマズや亀有のMOVIXといった、近隣地域に次々と誕生したシネマコンプレックスに多くの観客が流出し始め、施設の老朽化も進行していました。こうした要因が重なり、上野セントラルは2006年 5月14日をもって閉館することを決定。53年間の長きにわたる歴史に幕を下ろしました。

上野セントラル閉館後も、入居していた上野松竹デパートはしばらく営業を継続しましたが、こちらも再開発のために2012年 8月31日をもって閉店し、同年中に建物は解体されました。その跡地には新たな飲食施設ビルが建設され、「上野の森さくらテラス」として2014年 4月26日に開業しています。

各スクリーンの特徴（閉館時）

閉館時点での各スクリーンの特徴は以下の通りです。

セントラル1

2階に位置し、定員は619名（2階席含む）と最も広いスクリーンでした。開業当初の上野松竹映画劇場であり、松竹の封切作品を中心に上映していましたが、閉館が近づく時期には『ハリー・ポッター』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのような洋画の大作や話題作が上映されることが多くなりました。

セントラル2

地下1階にあり、定員は105名でした。旧上野映画劇場で、一時期は上野日活館閉鎖後に日活の封切館として、特に日活ロマンポルノ作品を中心に上映していました。名称変更後は、個性的な洋画や邦画をセレクトして上映していました。

セントラル3

セントラル2と同じ地下1階に位置し、定員も105名でした。旧上野名画座で、東活（実質的には松竹系）のピンク映画を主に上映していました。末期にはセントラル2と同様に、特徴のある洋画・邦画の上映を行いました。

セントラル4

2階に位置する最も小規模なスクリーンで、定員は63名でした。当初は邦画・洋画問わずピンク映画が中心でしたが、1990年代以降はムーブオーバー作品（他館での上映後に引き続いて上映される作品）が増加しました。閉館が近い時期には、セントラル2・3と同様に洋画・邦画のロードショー作品が上映されることもありました。

上野セントラルは、その歴史の中で多様な作品を上映し、上野の映画文化の一翼を担いました。閉館後、上野エリアの映画館の風景は大きく変わりましたが、この映画館があった記憶は、多くの映画ファンの中に残っています。

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