上野不忍池競馬

上野不忍池競馬の概要

上野不忍池競馬（うえのしのばずのいけけいば）は、1884年から1892年にかけて東京の上野不忍池で行われた競馬イベントです。このイベントは共同競馬会社によって主催され、馬券が販売されることはなく、ギャンブルではなく社交場としての側面が強調されていました。明治天皇や華族、政府高官といった名士たちが集まり、華やかな催しとして観覧されました。

背景と運営

共同競馬会社は1879年に設立され、初めは戸山学校競馬場で競馬を行っていましたが、交通の不便さから1884年に上野不忍池に移転しました。ここで整備された競馬場は、不忍池を周回する880間（約1,600メートル）のコースを中心に、さまざまな施設が設けられました。社長には小松宮、副社長には毛利元徳や鍋島直大が名を連ね、伊藤博文などの高官が幹事や馬主として活動していました。この時期の競馬は、イギリスの貴族社会を模して社交の場とされたことが特徴です。

競馬場の特徴

不忍池で競馬を開催するための総工費は117,000円にのぼり、大規模な事業として整備が行われました。競馬場は農商務省の管轄下で7年間の使用が許可され、北側の埋立が行われたり整形が施されるなど、精巧なコース作りがなされました。馬見所（メインスタンド）や厩舎も設けられ、上流階級の観客たちがくつろぎつつレースを楽しむ場として機能しました。

馬と騎手

1884年当初は、参加する馬の多くが在来の日本馬であり、サラブレッドなどの西洋馬はほとんど存在しませんでした。一部の馬主には外国人もおり、馬名には和名も洋名も見受けられました。騎手は主に招魂社や吹上の競馬で活動していた者が務めていましたが、自ら馬主である旧大名や士族が騎手を務めることもありました。

開場と催し

不忍池競馬の初開催は1884年の11月1日であり、明治天皇をお迎えしながら華やかに行われました。多くの政府高官や貴族層が参加し、一般人も観覧が可能でした。競馬開催中は不忍池が美しく飾られ、陸軍楽隊の演奏も響きわたりました。最初のレースは日本馬によるもので、賞金総額は1,000円でした。レースは様々な距離で行われ、8レースが3日間にわたり開催されました。

閉場とその後

しかし、開催を重ねるうちに共同競馬会社は赤字経営が続き、1886年には開催日数が減少、1892年の秋には競馬開催が終了しました。上野不忍池での競馬は名士たちの社交場としての役割を果たしましたが、経営難とともにその役割も終えました。その後、1906年には関八州競馬大会が行われましたが、これが上野不忍池での最後の競馬となります。

研究と評価

上野不忍池競馬に関する研究は進められており、富山大学の立川健治教授が詳しい著作を発表しています。明治時代の競馬は、社交の場としての意義や、当時の文化的背景を理解する上で重要な要素を持っています。上野不忍池競馬は、鹿鳴館時代の一大イベントとしての位置付けを持ち、現在でも日本の競馬史において重要な一ページとして語り継がれています。

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