上野国神名帳

上野国神名帳の概要

上野国神名帳（こうずけのくにじんみょうちょう）は、上野国の神社に関する詳細な情報を集約した資料です。この文書は、現在までに確認されているだけで25本が存在しており、それぞれに若干の違いがあります。その中でも、特に重要とされるのは、総社神社所蔵本、貫前神社所蔵本、伴信友本の3種類です。これらは記載されている神社の数や内容において異なりつつも、その根本的な系統は同じと見なされています。

総社神社所蔵本

この本は群馬県前橋市にある総社神社に保管されている古い筆写本です。巻子形式で、江戸時代以降には神体としての役割も果たしてきました。1974年には群馬県指定の重要文化財に認定されています。文中には「元和三年（1617年）」に筆写された旨が記されています。特に、総社神社の祭神である磐筒男・磐筒女が上野国の一宮である貫前神社の祭神である経津主神の母であるという記述があり、総社神社が一宮よりも重要であることを示す内容が含まれています。

貫前神社所蔵本

群馬県富岡市に位置する上野国の一宮である貫前神社所蔵の本で、一般には「一宮本」と呼ばれています。この文書は折りたたみ本の形式を持ち、掲載されている神社に関する情報が一致しない点が多いため、過去の編集に混乱が見られます。こちらにも「氏春」という名が末尾に記されていますが、本文とは異なる筆で書かれている可能性があります。

伴信友本

伴信友本は本来、貫前神社で伝承されていたものであり、国学者奈佐勝皐による書写が含まれていると考えられています。この文献は『群書類従』にも収録されています。

3本の比較

3本の神名帳を比較すると、特に鎮守神に関しての記述が異なります。総社神社本では鎮守神が10社と記載されているのに対して、貫前神社本と伴信友本ではそれが12社となっています。貫前神社および伴信友本の内容は、延喜式の記述と一致する部分が多く、そこに現れる神は経津主神に関連しています。また、郡配列では、総社神社本と貫前神社本が同様の配列を採用している一方、伴信友本は独自の配列方法を示しており、特に利根川に関連する神社の位置を考慮した上での整理がなされていると見られます。

結論

上野国神名帳は、地元の神社についての歴史・神話が綴られている重要な文書であり、各本の特徴を通じて当時の人々の信仰や社会的背景が浮かび上がります。この資料は地域文化の理解を深める上で、極めて貴重な存在となっています。

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