神体

神道における神体：多様な形態と信仰

神道において、神が宿るとされる物体、あるいは場所を神体（しんたい）と呼びます。崇敬の対象として、人々の信仰を集めてきました。神体となるものは多岐に渡り、自然物から人工物、さらには概念的なものまで含みます。

神体の多様な姿

神体は、巨石や樹木、山や森といった自然物から、鏡や刀、玉といった人工物まで、実に多様です。宗像大社の沖ノ島、大神神社の三輪山などは、それぞれが神体として崇められています。伊勢神宮では、三種の神器の一つである八咫[[鏡]]が神体として祀られています。これらの例からもわかるように、神体は特定の形状や材質に限定されるものではなく、神が宿ると信じられるあらゆるものが神体となり得るのです。

さらに、神道における神体観は、時代や地域によって変化してきました。古神道では、海や川、滝、山、森といった自然のランドマークが、神域、そして神体が宿る場所と考えられていました。これらの場所は、現世と常世（とこよ）の境界、神の国への入り口と捉えられていたのです。

一時的または永続的な神体

神体の存続期間は様々です。伊勢神宮のように長く受け継がれるものもあれば、御幣や神輿のように定期的に更新されるものもあります。諏訪大社の御柱や出雲大社の神殿、あるいは一般的な神社の社殿なども、一定の期間を経て更新、または建て替えが行われます。これらの更新の頻度は、神体の規模や複雑さと必ずしも比例するものではありません。一時的な神体として、神道の儀式で使われる御幣や、神籬（ひもろぎ）として用いられる榊の枝葉、祭礼で使われる神輿や山車なども挙げられます。

古神道と神奈備

古神道では、神籬（ひもろぎ）や磐座（いわくら）として、自然物を神体として崇める信仰が根強かったです。海、川、滝、山、森、木、岩など、目立つ自然の地形や巨岩が神域とされ、神が宿ると信じられていました。これらの場所は、神奈備（かんなび）とも呼ばれ、神が常に鎮座する、あるいは隠れ住む場所と認識されていました。福岡県宗像市の沖ノ島全体や富士山なども、神奈備の代表的な例と言えるでしょう。また、雷が落ちた場所なども、神体として扱われることがありました。鹿島神宮や香取神宮にある要石は、武甕槌神が地震を起こす大鯰を封じたものとして神体とされています。

皇室神道と三種の神器

皇室神道においては、鏡、刀、曲玉からなる三種の神器が、神体として重要な位置を占めています。これらは古代における王権の象徴であり、皇室が代々受け継いできたものです。大相撲は神への奉納神事であり、横綱は神体としての象徴である注連縄を張ることを許される、特別な存在です。

神社神道と神体

神社神道では、神社の社殿自体が神体となる場合もあります。多くの神社では、神体の証として注連縄が飾られています。歴史の古い神社の中には、本殿がなく、山や丘、神木が神体となっている場合もあります（例：諏訪大社、大神神社）。また、子宝信仰の強い地域では、男根が神体とされることもあります。神社神道の社殿も古くから存在し、遺跡からは祭祀に使われた神殿跡が発掘されています。

神体は、神道における信仰の対象であり、その多様な形態は、神道信仰の奥深さと柔軟性を示しています。神が宿ると信じられるあらゆるものが、神体となり得るのです。

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