上野壮夫

上野壮夫（うえの たけお/そうふ）

概要

上野壮夫は、1905年6月2日に茨城県結城郡で生まれ、1979年6月5日に没した日本の詩人、小説家、そしてコピーライターです。彼の活動は多岐にわたり、文学、政治運動、広告業界など、さまざまな分野でその才能を発揮しました。また、妻の小坂たき子も小説家であり、夫婦で文学の世界に足跡を残しています。

若年期と政治活動

上野は早稲田高等学院露文学科を中退後、アナキズム系のグループ「黒嵐時代」に参加しました。1929年には「文芸戦線」に携わり、1927年には労農芸術家連盟の書記長や前衛芸術家同盟の結成に尽力するなど、初期は政治運動に深く関わっていました。また、日本プロレタリア作家同盟にも加入し、プロレタリア文学運動の担い手としても活動しました。

文学活動

上野は、小説、詩文、評論など、幅広いジャンルで作品を発表しました。1930年には小説「跳弾」を『戦旗』に発表。詩文では「戦争へ」など、社会的なテーマを扱った作品も多く残しました。

著書には、詩集『黒の時代』、随筆集『老けてゆく革命』、そして全集などがあります。全集には小説、詩、評論・随想などが収録されており、彼の文学活動の全貌を知ることができます。

また、翻訳家としても活動し、ツルゲーネフの『ルーヂン』を翻訳しました。

広告業界での活躍

プロレタリア運動の解体後、上野は人物評論社に就職し、『人物評論』編集部に勤務しました。その後、花王石鹸（現在の花王）奉天支店を経て、株式会社U.P.R.の社長に就任しました。さらに1962年からは東京コピーライターズクラブ会長を務め、コピーライターとしても多くのヒット作を生み出し、広告業界で重要な役割を果たしました。

人物

上野壮夫は、文学と社会運動の両面で活動し、戦後はコピーライターとして成功を収めた、多才な人物でした。彼の作品は、社会に対する深い洞察力と、人間への温かいまなざしに満ちています。

主な作品

小説
「跳弾」(『戦旗』1930年4月号）
詩文
「戦争へ」
著書
『黒の時代 詩集』栄光出版社, 1977.10
『老けてゆく革命 随筆集』永田書房, 1982.5
『上野壮夫全集 第2巻 (小説)』図書新聞, 2009.4
『上野壮夫全集 第1巻 (詩) 』図書新聞, 2010.4
『上野壮夫全集 別冊 上野壮夫研究』辻井喬他著 図書新聞, 2011.12
『上野壮夫全集 第3巻 (評論・随想)』図書新聞, 2011.12
翻訳
* ツルゲネフ『ルーヂン』ナウカ社, 1936

もう一度検索