上野裕和

上野裕和：将棋棋士としての軌跡と多様な活動

上野裕和氏は、1977年生まれの将棋棋士です。神奈川県厚木市出身で、安恵照剛八段に師事しました。棋士番号は238番。5歳の頃、兄と共に父親から将棋の手ほどきを受け、小学生時代には地元の将棋道場で研鑽を積みました。道場では、後にプロ棋士となる北浜健介氏や鈴木大介氏らと切磋琢磨した経験が、彼の棋士人生の礎となりました。

1991年9月、14歳で奨励会に入会。三段昇段までには幾多の苦難がありましたが、持ち前の粘り強さで難関を乗り越え、1999年9月に三段に昇段。そして2000年10月、三段リーグで好成績を収め、プロ棋士となる四段に昇段を果たしました。

プロ入り後は、順位戦やNHK杯などの公式戦で活躍。持ち前の序盤の鋭い読みと巧みな戦術で、多くの勝利を収めました。特に序盤研究には定評があり、その成果は数々の著書に結実しています。しかしながら、順位戦では苦戦が続き、2010年度から2012年度にかけて3期連続で降級点を喫し、順位戦への参加資格を失うこととなりました。

それでも上野氏は、将棋への情熱を失うことなく、様々な活動に取り組んでいました。アマチュアを対象とした将棋教室の講師を務めるなど、後進の育成にも尽力。さらに、2009年から2011年にかけては日本将棋連盟の理事を務め、組織運営にも携わりました。理事在任中には、将棋連盟公式Webサイトの問題点などを指摘し、改善を求めるなど、組織改革にも貢献しました。

2018年には、14年ぶりとなるNHK杯テレビ将棋トーナメント本戦出場を果たすなど、ベテラン棋士として存在感を示しました。また、自身のブログやTwitterを通じて、将棋界の様々な出来事について積極的に意見を発信し、ファンの間で大きな支持を得ました。

棋風は、序盤巧者として知られています。相居飛車、対抗形、相振り飛車など、幅広い戦法を操り、その柔軟な対応力は彼の大きな強みでした。

2023年5月16日、フリークラス規定により引退。長きに渡る棋士生活に幕を閉じました。

上野裕和氏の棋士人生は、順風満帆とは言い難い道のりでした。しかし、困難を乗り越える粘り強さと、将棋への揺るぎない情熱が、彼を支え続けました。多くのファンに惜しまれつつ引退した彼の功績は、将棋界に長く語り継がれることでしょう。

主な著書

『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』
『将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編』
『将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編』
『将棋・終盤完全ガイド　基本編』

人物像

愛称は「ちゅう太」。その由来は、ねずみに顔が似ていることから。本人もこの愛称を気に入っており、自身のブログのタイトルにも使用しています。2012年には結婚。2006年には実母を亡くしており、その翌年にC級1組へ昇級した際は、亡き母に捧げる形となったと語っています。

趣味は読書で、吉本ばなな、村山由佳など多くの作家を愛読しているようです。

上野裕和氏は、棋士としてだけでなく、指導者、理事、そして将棋界の発展に貢献した存在として、長く記憶されるでしょう。彼の功績は、単なる棋士としての勝利の数だけにとどまらず、将棋界への貢献、そして後進の育成といった、多岐にわたる活動に表れていると言えるでしょう。

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