下手人

下手人とは

下手人（げしゅにん、げしにん）は、主に殺人犯を指す言葉であり、江戸時代に使われていた特有の犯罪に関する語です。その起源は中世に遡り、解死人などの言葉と関連付けられています。

意義と用法

歴史的に見て、「下手人」という言葉は、犯罪行為を行った者、あるいはその身代わりを指しました。また、当時は庶民に対して科される6種類の死刑の一つでもありました。現代日本においてはほぼ「殺人犯」という意味合いでしか使用されていませんが、その背景には複雑な法制度と社会的慣習が存在したのです。

江戸時代の死刑制度

現在の日本では死刑の方法は「絞首刑」が一般的ですが、江戸時代には様々な種類の死刑が存在しました。その中でも斬首刑は特に有名で、刀によって首をはねる方法でした。この刑は、他の付加的な刑罰が科されることはなく、引取り人が存在する場合は執行後に死者を引き渡し、供養することが許可されていました。

中世の下手人

中世における下手人の概念は、特に殺害事件に絡んでより広範囲に使用されました。この時期、加害者が属する集団から被害者に差し出される者が下手人とされ、実際の犯行者ではなく、下層の身分の者がその役割を果たすことが多かったのです。鎌倉時代や南北朝時代には、殺人以外の狼藉行為でも下手人の制度が用いられていました。

下手人として差し出された者は、受け取った側により自由に処分されることが原則でしたが、室町時代には謝罪の意に基づき殺害が回避される慣習が定着しました。また、真犯人の所在が確認されるまでの間、人質として扱われるケースもありました。

近世における下手人の扱い

近世においても、下手人は依然として刑罰の一種として存在し続けました。この刑は獄門や死罪と同じく打ち首によるものであるものの、死体を晒すことや試し斬りに使用することはないため、比較的軽い刑に分類されます。さらに、下手人が科される犯罪は通常の殺人であり、特別な関係にある者同士の殺し合いや毒殺などは除外されます。

共犯者が存在する場合には、一般的にその中の1名のみが下手人として処断され、教唆者が下手人と認識される場合もあります。また、複数で殺害する場合には、最初に手を出した者が下手人として扱われます。これは、1件の殺人に対し1件の刑罰を適用することを基本とする考え方に基づいています。

言い回しと文化的背景

近世では、「下手人に取る」「下手人を願う」といった表現が見られ、これは中世の法の慣習を引き継いだことを示しています。江戸時代の他の死刑制度とは異なり、この下手人制度には特有の文化的背景と法的意義がありました。

参考文献

• - 刑務協会 編『日本近世行刑史稿』
• - 平松, 義郎「下手人について―近世刑法史雑感」
• - 牧, 英正「下手人という仕置の成立」

このように、下手人は江戸時代の法律体系において特異な位置を占め、その実際の運用は時代背景や社会状況によって影響を受けながら変遷してきたのです。

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