下毛類

下毛類（かもうるい）は、単細胞生物である繊毛虫の多様なグループの一つです。この類の特徴は、全身が均一に細かい繊毛で覆われている他の繊毛虫（例えばゾウリムシ）とは異なり、特に腹面に多くの繊毛が集中的に生えている点、そして何よりも複数の繊毛が束ねられてできた太い「繊毛束」を持つことにあります。

特徴

下毛類の体は多くの場合、多少とも扁平な形状をしており、明確な腹面と背面を持ちます。繊毛は主に腹面に発達し、背面にはほとんど見られません。腹面の繊毛の配置は様々で、体の縁に沿って規則的に並んでいたり、体の後端に太いものが集まっていたりするなど、特定のパターンを示します。最大の識別点とも言えるのが、複数の繊毛が集合して形成される剛毛状の「繊毛束」です。この繊毛束の数は種類によって異なり、腹面に少数だけ持つものもいます。これらの繊毛束は、まるで小さな肢のように見え、移動や基質への固着に用いられます。

全身に細かい繊毛が密生する下毛類も存在しますが、その場合も、繊毛の数はゾウリムシなどに比べて少なく、比較的まばらな列を形成することがあります。細胞口は通常、体の先端ややや側面に位置し、横長の開口部を形成しており、その周囲には繊毛列が整然と並んでいます。

運動様式もまた特徴的です。下毛類はゾウリムシのように水中を滑らかに泳ぎ回るよりも、基質の表面（例えば水中の落ち葉や石、汚泥など）に腹面を接触させて這うように移動することを好みます。その動きは単調ではなく、ゆっくりと動いていたかと思えば、突然素早く移動したり、跳ねるように瞬間的に動いたりするなど、変化に富みます。特に、腹面の繊毛束が少ない種が基質上を這い回る様子は、小型の昆虫（例えばゴキブリ）が壁を走る動きを彷彿とさせることもあります。水中に泳ぎ出すこともありますが、その際も跳ねるような独特な動きを見せます。体の大きさは種類によって異なりますが、大きいものでも500マイクロメートル（0.5ミリメートル）程度です。

下毛類は生息環境に対する適応力が高く、淡水域、海水域の双方に分布しており、特に有機物が豊富な汚泥中などでもよく観察されます。

分類

下毛類は、その繊毛の配列や体形、運動様式などに基づいていくつかの科に分類されます。代表的な科には以下のようなものがあります。

オキシトリカ科 (Oxytrichidae): この科の種は、腹面や体の周辺部に繊毛が比較的密に並びます。体はやや柔軟性がある傾向があります。代表的な属には、平たいゾウリムシのような形をしたOxytricha、前後に細長く腹面に繊毛が並ぶUroleptus、扁平で後端に長い尾のような棘毛を3本持つStylonychia（スティロニキア）などがあります。
ユープロテス科 (Euplotidae): この科の種は、体が平たく、比較的硬いのが特徴です。細かい繊毛は少なく、特に体の後端に顕著な繊毛束が並びます。代表的な属にEuplotesがあります。
アスピディスカ科 (Aspidiscidae): 体が前後に短く、固い体を持つ科です。口の部分が比較的小さく、腹面には数の少ない、しかし顕著な繊毛束が配置されています。代表的な属にAspidisca*（アスピディスカ）があります。

これらの科は、下毛類の多様な形態と生態を反映しています。下毛類の研究は、単細胞生物の複雑な構造や機能、進化を理解する上で重要な手がかりを提供しています。

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